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松本大策のコラム
「畜産農家の後継者対策」

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2010年10月18日

 ようやく朝夕は涼しくなり、忙しい時期ですね。今回は農家さんの後継者対策について、日頃考えていることをお話しします。あくまでも個人的な考えですから、反論やご批判もあって当然だと思いますが、僕はあくまで、一人一人がしあわせであってほしいという想いでお話しさせていただきますね。

 こう言うと身もフタもないのですが、「後継者対策」をしなければならない時点で、後継者を残すのはやめておいた方がよいと思います。僕の知る限り、立派な後継者がいる農場は、お父さんやお母さんがしあわせな顔をして牛を飼っている、あるいは希望を持って牛を飼っているんです。
 「この牛がいたおかげで息子を学校にも出してやれたし、気ままに楽しく暮らせたよ」ってニコニコしている農家さんの息子さんなら、そりゃ「よーし、俺も牛を飼うぞ!」って思うんです。でも、逆に「あーあ、牛なんか飼ってるから温泉にもいけないし、借金ばかりでなんも楽しくない」なんて親が言ってる農場では、息子さんや娘さんだって「こりゃ牛飼いってやばいわ。やめとこう」って思うってもんです。だから、子供が進んで牛を飼いたいって言わないのに、無理に牛を飼わせることはないって思うんです。

 それから、子供さんに家督を譲るのは、「よし、うちの経営はこれで万全だ」って時まで待ちましょうね。それまでは専属従業員などにして給料を払っておけばいいんです。そうでないと、もし借金まみれになったときに、「相続放棄」で子供さんを逃がしてあげることもできません。いろんな資金でも、子供さんを経営主体にしないといけないものには、経営にめどが付いていない状況では手を出してはいけません。だって、子供さんを経営主体にするって事は、「借金は子供さんが背負いますよ」って事ですからね。

 もう一つ。子供さんに牧場を譲るときに、きちんとお話ししておいてほしいことがあるんです。それは「俺はおまえを幸せにしたいから牧場を譲ったんだ。もし牧場がやばくなったら売っぱらってしまえよ。決して親が残した「物」に縛られて不幸にはなるなよ。」って事です。いい子供さんほど、親の残してくれた物を守ろうとして無理したり、経営が苦しくても何とか守らなくっちゃ、って不幸になっていくことがあるんです。それってみなさんの望むことではないでしょう?

 みなさんにも幸せな牛飼いをしてほしい。みなさんの子供さんにも幸せな牛飼いをしてほしい。でも牛飼いに縛られて不幸になるのだけは、絶対避けてほしい。これが僕の本音です。

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