暑い日が続きますね。各地から食欲低下や息が荒い(呼吸速拍)などの相談が寄せられています。とくに肥育牛にとっては、この時期は最も注意が必要な時期です。
最近は、景気低迷や口蹄疫の風評被害なども重なって、出荷が伸びている肥育牛もたくさんいます。本来なら、すでに仕上がって出荷となる牛さんたちが2〜3ヶ月も出荷が伸びているような農場もあります。そういった農場ではとくに牛さんに負担が来ているため注意が必要です。
最も注意しなければならない熱射病の症状は、息が荒く口から泡を吹いていたり、呼吸が苦しそうなタイプです。このタイプは暑さで心臓が弱り、血液の循環が悪くなって、肺の毛細血管の血液が十分に心臓へ帰って行かなくなり、肺に水分が漏れ出てたまってしまう、いわゆる肺水腫という状態です。呼吸困難に陥っている場合、助けるのは困難です。夏場は午後から夕方の巡回を増やし、早期発見したら早急に食肉検査場へ搬送することをお勧めします。間違っても点滴(補液)などしてはいけません。状況を劇的に悪化させます。
そこまでいかなくても、午後から夕方にかけて、呼吸が速くよだれを垂らして元気のない牛さんの場合、牛舎の外にゆっくり出してあげて(急ぐと急死する場合もあるんです)、後頭部から冷水をかけ、2〜3分冷やしたら、少しずつ後方へ水をかけていき、全身を冷やしてあげます。牛さんが落ち着いたら、金ブラシなどで水をしごいてやり、最後はタオルでしっかり拭きあげてやります。そうしないと、牛さんの体毛にたまった水が断熱材となって、さらに後から症状が悪くなりやすいのです。
出来れば冷やしながら獣医さんを呼んで心臓の状態など見ていただき、可能と判断されたら重曹注やリンゲル、などを点滴して血液をさらさらにしてあげたり、元気の出る水性ビタミン剤(レバチオニンなど)を加えてあげるとよいでしょう。
後期の牛さんは、ビタミンAやカルシウムが不足している事が多く、急性心不全や肺水腫による死亡の危険率が高いのでご注意下さい。暑さ負けしている牛さんが多いな、と感じたらビタラップ63などのビタミン剤を120万単位くらい1回飼料添加し、ドン八ヶ岳などの亜鉛製剤を50g×3日〜5日飼料添加します。またβカロテンが不足してもいろんな病気の危険が高まるので、ルーサンペレット100g×5日間程度添加してあげるとよいでしょう。コンサル先の方にはやっていただいていますが、それで肉質が落ちたというクレームはありません。1頭でも死ぬと大きなダメージです。きちんと対処してあげましょう。