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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その23〜スタータのお話し(4)〜」

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2010年4月19日

スタータと乾草

 スタータの給与期間は、粗飼料はやらない方がよいのか?という議論があります。外国の文献などを見る限り、第一胃の粘膜絨毛の発達には、スタータ単独の方が有利のように書いてあるものもあります。
 しかし、牛さんは第一胃の粘膜だけ作ればよいと言うわけでもありません。牛さん全体を見て、バランスよく発育させないといけないのです。ここで、もう一度粗飼料の意味を考えてみましょう。粗飼料は、第一胃の大きさ、善玉菌の巣となるルーメンマットという繊維のかたまりを作る働きがあります。さらに穀類多給の際に乳酸(強い酸で、過多になると第一胃粘膜絨毛を萎縮させます。ルーメンアシドーシスの最も大きな原因となる酸です。)の発生速度を調整したり、乳酸からのプロピオン酸合成を行う善玉菌を増やしてくれる働きがあります。
 それだけではありません。牛さんの体高を作るためにも粗飼料からのタンパク質とカルシウムが大きな働きをします。なぜかはまだ僕には解らないのですが、配合飼料でタンパク質もカルシウムも計算上は十分与えられます。しかし、同じ体高は出来ないことが多いのです。
 牛さんは、もともと草食動物ですし、自然状態ではお母さん牛が食べている草を、子牛も生まれた次の日位から遊び食いしています。僕は何事も極端は好きではないので、スタータを100g食べられるようになったら、良質の乾草を好きなだけ(といっても量は知れています)与えるようにして遊び食いしてもらっています。
 粗飼料を与えずにうまくいってらっしゃる農場では、そのままの管理をなさるとよいと思いますが、新しく取り組むのであれば、試験的に一部でやってみて下さい。確かに育成期に移行する時点までは、スタータとミルクのみの方が発育がよかったが、育成期に粗飼料の食い込みが悪く、体高が出来なくなった、という事例もあるのです。

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