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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その16〜ミルクのお話し(4)〜」

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2010年2月1日


哺乳ロボットの利用

 子牛の哺育で、大型牧場ではさらなる効率化を求めて群飼育による哺乳ロボットを利用するところも多いと思います。今回は、哺乳ロボットの利点と欠点について、少し一緒に考えてみましょう。
 まず、哺乳ロボットの良いところは、ミルクの濃度や温度管理が正確である、個体別の哺乳量の把握と記録が出来る、何より省力化が図れる、というところでしょう。
 しかし、現場では哺乳ロボットのカーフコート(子牛を群飼で放しておく場所)で病気が蔓延して治療に追われ、省力化どころの話じゃないどころか、経済性の低下も大きな問題になっています。これらを克服すれば、哺乳ロボットの利用価値も高まり、子牛の経済性も損なわれなくて済みます。
 では、なぜ哺乳ロボットでは病気が問題になりやすいのでしょうか?いくつかの原因が挙げられますが、なんと言っても1番目は、「群編成ストレス」による免疫の低下でしょう。保育園でも病気が流行りやすいでしょ?あれとおんなじで、人間(牛さん?)関係のストレスって意外に大きいのです。ストレスがかかると免疫が低下して病気に弱くなります。群編成ストレスによる免疫低下は、たくさんの子牛を同じ部屋に入れて15分位から免疫が低下し始め、2週間目位が免疫が最低の状態になり、もとの免疫の強さまで回復するのに3週間くらいかかるそうです。
 そして、せっかく回復した仔牛の群に新しい子牛を追加すると、前からいた子牛ちゃん達も含めて、群全体の免疫が再び低下してしまうのです。
 思い起こしてみて下さい。子牛は同じ日にいっぺんに生まれるわけではないので、継ぎ足しでカーフコートに導入し、大きくなった子牛達から次のマスへ移動していく、というやり方をしていませんか?これでは、ずっと子牛の免疫が低下したまま、つまり病気に弱いままで管理することになってしまいます。病気が増えて当たり前ですよね。

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