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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その15〜ミルクのお話し(3)〜」

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2010年1月25日


 ときおり、「生まれたばかりの子牛がミルクを飲ませるとすぐにむせる」という相談をお受けすることがあります。別に元気や飲乳欲がないわけではないし、熱や下痢などの症状もないというのです。こういう子牛は確かにいます。これは「嚥下反射」という機能が低い子牛です。
 子牛でも人でも、口から喉に続く部分(喉頭といいます)の作りは似ています。空気の通り道と液体や固体、つまり飲み物や食べ物の通り道は、喉頭で分かれて、空気は「気管」へ、飲み物や食べ物は「食道」へ流れていきます。問題はこの部分の構造です。空気と液体では、当然空気が軽いから、液体は下を、空気が上を流れていきます。しかしながら、喉頭の構造では、液体が流れていく食道が上、空気が入っていく気管が下、というちょっと矛盾した構造になっているのです。
 ですから、液体が流れていく場合は、下側の気管に「をする必要があります。このフタのことを「喉頭蓋」と呼びます。口から液体が流れてくる(つまり飲み物を飲んだ状態)と、喉頭蓋が瞬時に反応して閉まります。ですから液体は気管にはいることがなく安全に食道に流れ込んでいくのです。これを「喉頭蓋反射」と呼ぶのですが、子牛の中には、まだこの喉頭蓋反射がうまく機能していない子もいるのです。そういう子は、頭では「ミルクを飲もう!」と考えていても、口から喉頭にミルクが流れていくときに喉頭蓋が閉まりきれなくて少量のミルクが気管にはいるためにむせたり咳き込んだりするのです。下手をすると誤嚥性肺炎を起こすことすらあります。
 そういう子牛が見つかった場合は、指に(子牛じゃなくてあなたの指ですよ)に白砂糖をまぶして子牛の上の歯ぐき(歯がなくて歯床板という板状になっています)や下の歯ぐきをマッサージしてあげましょう。数日で喉頭蓋反射が改善してむせなくなることが多いですよ。
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