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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その14〜ミルクのお話し(2)〜」

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2010年1月18日

 さて、子牛の最初のご飯であるミルクのお話しをしていますが、母牛の管理などは以前のコラムを参照いただくとして、今回は人工哺育について少し考えてみたいと思います。
 前回、人工哺育の場合、母牛の発情回帰が改善するなど、よいことを書きました。しかし、やり方を間違えると、子牛の飲乳量が少なかったり下痢や軟便の原因になるなど、様々なトラブルに巻き込まれます。
 人工哺育も大まかに分けて哺育ロボットを用いる群哺育と、主に個別の手やり哺育に分けられますから、それぞれについていくつかの注意点を一緒に考えてみましょう。
 まず手やりの個別哺育ですが、この場合ミルクを作るのは人間です。最も大切なのは衛生的な器具を用いるということと、ミルクの温度管理です。「温度管理はだいたいちゃんとやっています」って仰る方が多いのですが、必ず温度計を使うようにしましょう。人間の感覚は意外にいい加減なものです。たとえば、「この子牛はミルクを1リットル以上飲ませるとふるえが来て調子が悪いんです。」という稟告をいただくことがあります。この場合はたいてい冬場で、手の感覚でミルクを調乳している農場が多いです。外気温が低い場合、手の温度感覚が狂って、少し位ミルクの温度が低くても「正しい温度」に感じてしまうのです。寒い日はお風呂が熱く感じるのと同じですね。
 子牛の内部体温は39.5℃以上ですから、ここに36℃くらいのミルクが入ってくると、体温が奪われて寒くなりふるえが来るのです。それだけではありません。ミルクが入ってきた第4胃とくっついている腸の温度が低下します。腸内では善玉菌は高温に強く、悪玉菌は低温に強いのですが(病気すると熱が出るのは、悪玉菌をやっつけるためです)、腸が冷えて低温に強い悪玉菌の方が優勢になります。すると消化不良や胃腸炎を起こし、元気も食欲もなくなってしまう、というわけです。
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