(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
伏見康生のコラム
NO.205:薬剤関連性腸疾患 その4

コラム一覧に戻る

2012年10月17日

 βラクタム系抗生物質の投与と同時に、コクシジウムの排除のためにトルトラズリル(バイコックス)を投与することは非常に有効であり、子牛の出血性腸炎の発生時には初回治療時に″治療的投与″として、第一に使用したいです。
 冒頭で記載したように、偽膜性腸炎自体ここのところ遭遇していませんでした。これには子牛へのトルトラズリル製剤の予防的投与が大きく奏功しているものと考えられます。
 トルトラズリルの効能により牛はコクシジウムに対する免疫を獲得すると同時に重篤な感染が防がれています。その結果クロストリジウムによる二次感染も防がれているものと考えられます。

 経験上、トルトラズリルを投与しているにもかかわらず、患畜から大量のコクシジウムが検出されたことが何例かあります。原因としては投与忘れ(したと思っている)や投与失技(こぼし、上澄みの投与)等の人為的なミスがあると思われます。
 そのような患畜に限って症状は重篤化しているような印象が強いです。これには「投与しているから大丈夫だろう」という思い込みがあって、泥状下痢、流泥下痢の時点でサルファ剤等の有効なコクシジウムの対応策を取らずにいることが原因と思われます。

 そのようなリスクを考え、農家さんの禀告により「すでに投与しています」と言われても、必ず投与するようにしています。

fushimi_205

※ 写真は成牛のルーメンアシドーシスに伴って排出されるムチン

|