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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その8〜生理的貧血のお話し〜」

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2009年11月30日

 さて、初乳の給与まですめば、とりあえず子牛が生まれた日の対応は一段落です。
 次は、新生児期の衛生管理を考えていきましょう。子牛は、発育に伴って血液や、血液中の赤血球も増えていかなければなりません。これが順調に増えないと、いわゆる「貧血」に陥ります。赤血球は、鉄を含んだヘモグロビンという色素を含んでいます。じつは、子牛はミルクから吸収できる鉄分が少ないので、通常でも生後1週間から3週間の間に鉄欠乏性の貧血に陥るのです。これを「生理的貧血」と呼びます。生理的貧血に陥ると、血液が薄くなり酸素を運ぶ力が弱いので、抵抗力が低下して病気になりやすかったり、発育が遅れたりすることがあるのです。
 みなさんの所には、生まれたときはすごく大きいと思っていたのに、1ヶ月位すると「あれ?こんなもんだったっけ」って感じた子牛はいませんか?こういう「初期発育の遅延」の原因で多いのも「生理的貧血」なのです。
 それから、子牛で多く見られる「白痢」の多発時期と、生理的貧血の時期は一致することが多く、生理的貧血を予防することで白痢の発生率が激減する農場も多いのです。僕は、いろいろな地方を巡回していますが、生理的貧血とその予防をマニュアル化していただいている農場や県もたくさんあります。そして、生理的貧血の予防効果を再確認していただいている試験場もたくさんあります。
 生理的貧血の予防というと小難しそうですが、その正体は「鉄が不足するために赤血球が少なくなる」ということですから、対策は鉄分を補ってあげる、という簡単なものです。次回は、その方法についてお話ししましょう。
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