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松本大策のコラム
「子牛を丈夫に育てる その5」

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2009年10月26日


 ここらでお産のお話しなのですが、お産については桐野獣医師がコラムの中で詳細に書いているので、重複を避けて僕は生まれたあとのお話しに移りましょう。
 お産の時、子牛の呼吸が弱々しいことがあります。特に最近人気の大型気高牛の子牛では、分娩後に母牛の世話をしていると、気がついたときには子牛が死んでいた、なんてケースが増えています。まず子牛が生まれたら、後足を持ってつり下げてあげましょう。これによって、気管内の胎水を吐き出させることができます。つり下げ始めは子牛の頭はぐったりと垂れ下がっていますが、血液が頭に下がってシャキーンとなると意識がしっかりしてきて、頭を子牛が普通に立っている状態に上げてきます。ちょうど逆エビぞりみたいな体制になるんですね。これを「頭位保持反射」といって、かなり高度な脳の働きです。これが発現したら、もっと低位な「呼吸」とか「循環」といった生存のために必要な働きは十分発現していると考えられるので、この状態になるまでつり下げてあげます。時間にして20秒くらいです。
 この状態になったら、降ろして正座(正確には伏臥というのですが)させます。とにかく子牛が生まれたら、まず子牛が正常に生存できるのを確認したあとで母牛の産道の損傷や直腸の損傷を調べればよいのです。
 それから子牛のおへその消毒はきちんとしてあげましょう。最近、「尿膜管遺残」という状態が増えています。へその緒には、臍動脈と臍静脈(肝臓と胎盤をつなぐ血管)と尿膜管(子牛のオシッコをためるために膀胱と尿膜をつなぐ)の3本の管があります。これらの管は、子牛が生まれたらすぐにぺったんこにつぶれて「索」という状態になるのですが、なかなか管がつぶれず開いたままの子牛は、ここからバイ菌が入って膀胱炎や腹膜炎を起こす子がいるのです。
 せっかく苦労して産ませた子牛です。きちんとおへその消毒や、分娩舎の衛生度が低いようならペニシリンを2mlくらい打ってあげることも、子牛を護るためには必要かも知れません。地元の先生ときちんと相談しておきましょう。
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