(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
伏見康生のコラム
NO.202:薬剤関連性腸疾患

コラム一覧に戻る

2012年9月26日

 偽膜性腸炎・・・久しく出会っておりませんでした。

 偽膜性腸炎はヒトの医療分野に於いては、セフェム系等の広域スペクトラムの抗生物質を連投した場合に、菌交代症により異常増殖したクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)の産生するエンテロトキシンにより起こります。これにより腸管に広範な白色ないし淡い黄色の円形または不整形地図状の偽膜が形成されるとされています。
 このような医原性の腸炎を薬剤関連性腸疾患と言います。当然、原因となるような薬剤に関しては慎重な使用が求められます。

 ・・・しかしながら、文面を見ただけですが、私たちが目にしたことのある子牛の偽膜性腸炎と比べると少し程度の軽いものなのかな??という印象です。

 そもそも私たちが現場で偽膜性腸炎に遭遇するときというのは、初診の時点ですでに「出血性腸炎」であり、数診ののちに偽膜性腸炎に移行していくということが非常に多いと思います。それ以外の病気(肺炎や関節炎など)で診療していた牛が偽膜性腸炎に発展した・・・というようなケースはあまり記憶にありません。
 このことは、初診の(薬剤を何も投与していない)時点ですでにコクシジウムやクロストリジウム・パーフリンゲンスは爆発的に増殖しており、腸粘膜組織さらにはもっと深層の組織が強い損傷を受けていることを表しています。
 すなわち・・・医原性菌交代症の影響を受けるまでもなく、すでに粘膜はエンテロトキシンに傷害され、偽膜形成の準備が大方進んでいると考えられます。

 つーづーく~

|