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松本大策のコラム
「ビタミンAと亜鉛のお話し その3」

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2009年8月31日

 フケって、頭皮だけみたいに思われていますけど、じつは他の体の表面にも起こります。たとえば、気管や肺の表面にフケがでると、風邪や肺炎を起こしやすくなりますし、腸の粘膜にフケが起こると下痢を起こしやすくなります。
 また、第一胃の表面にフケが起こると(ルーメンパラケラトーシスといいます)、第一胃粘膜からのVFA(揮発性脂肪酸という栄養素)の吸収が悪くなって、第一胃内が酸性化して病気になったり(ルーメンアシドーシスといいます。)、第一胃の粘膜の免疫が低下してバイ菌が侵入し、門脈という血管を通って肝臓に膿のかたまりを作ります。これが肝膿瘍という病気です。だから、肝臓廃棄で「肝膿瘍」と書いてあったら、肝臓の病気というよりも、第一胃の亜鉛やビタミンAの不足で起こる病気だと思ってください。
 ビタミンAや亜鉛が不足して第一胃粘膜の機能が低下した場合、第一胃の中にVFAという「酸」がたまって、これらの酸の影響で悪玉菌が死滅する際に出す毒素(エンドトキシンやクロストリジウム毒素)の影響で肝臓の炎症が起こったり、筋肉の水腫が起こるのが、ノコクズ肝やズルというヤツです。
 同じように生殖器の粘膜にフケが出来ると受精卵が着床できなくなって受胎率が低下するのです。
 ですから、牛さんの健康を保つには、ビタミンAと亜鉛は欠かすことが出来ないものなのです。肥育農場でビタミンA欠乏の牛さん(19ヶ月齢くらい)にビタミンAを与える事がありますが、この際に、ドン八ヶ岳を1頭あたり50g×3〜10日間飼料添加すると、効果の現れ方が早いし、その効果も高いですよ。
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