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池田哲平のコラム
尿石症を考える(12)

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2012年9月21日

 こうなってしまってはどうしようもない・・・・・・と諦めるにはまだ早いです。膀胱破裂も治癒する事があります。

 膀胱破裂の治療法は、多くの獣医の先生方があらゆる手法を試されていて色々ありますが、治癒率の比較などはあまりされていないので、どれがベストというのはなかなか難しいです。シェパードでは通常の尿道バイパス手術を行いつつ腹腔穿刺で腹腔内から排尿し、手術後は膀胱内にカテーテルを通してバイパス尿道から排尿する様なカテーテル留置を行うという方法をとっています。膀胱の破れた部位が下側(腹側)でなければ、カテーテルから持続排尿することで破れた部位に尿が触れる事がないので、破れた部位は自然と塞がる事が多く、治癒も見込めます。しかし、破れた箇所が下側の場合は予後不良となります。この時、破れた箇所は直接目では見えないので、手術をして経過を観察することで予後判定することが多いです。その際に観察すべきは、尿毒症の改善具合です。

 尿毒症とは、種々の尿毒素によって全身のあらゆる臓器が傷害され、機能障害に陥る事を言います。膀胱から腹腔内に漏れ出した尿は、本来体の外に出されるべきものです。尿中には体の中の色々な代謝物が溶けていて、中には生体にとって有毒な物質も多く存在しますます。膀胱破裂を起こした場合、それらが体の外に出ない事によって尿毒症の状態に陥ります。膀胱破裂になった場合、とにかく持続排尿と大量補液によって、体内の尿毒素をいち早く体外に代謝・排泄し、尿毒症の改善をはかる必要があります。

 写真の症例は前回紹介した牛さんの術後の様子です。この子は無事治癒し、肥育期間を全うして出荷されました。

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