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池田哲平のコラム
尿石症を考える(11)

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2012年9月14日

 12)お腹が腫れている
 月齢や性別に関係なく、電話の第一声で農家さんからこのような稟告を聞いた場合、皆さんならどの様な事を考えるでしょうか?

 “お腹”と言っても広いし、農家さんによっては胸の方まで“お腹”と表現される方もいます。なので正確にどの部位なのかを特定する事はとても大切です。
 そして、“腫れている”状態も様々です。ガスが張って膨らんでいるのか、浮腫が起きているのか、血腫が出来ているのか、膿が溜まっているのか、臍ヘルニアのように腹腔内の臓器が飛び出しているのか、硬いのか柔らかいのか、などなど。挙げれば色々とありますが、これは農家さんの話で分かる時もあれば、実際に視診・触診をしないと分からない時もあります。

 しかし、尿石症が散発している農家さんからこういった電話がかかってきた場合、一刻を争う事態を想定して牛舎に向わなければいけない事があります。それは「膀胱破裂」や「尿道破裂」を起こしている可能性があるからです。結石によって尿路が閉塞しておしっこが出なくなってしまうと、腎臓で出来たおしっこは膀胱にどんどん溜まる一方です。そうして限界を迎えた膀胱は破裂してしまう事があり、膀胱から漏れ出したおしっこが腹腔内に溜まり、下腹部が腫れあがって見えるのです。

ikeda_20120914

(つづく)

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