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池田哲平のコラム
尿石症を考える(8)

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2012年8月24日

9)毛艶が悪く発育が遅れている
 毛艶が悪い=換毛が上手くいっていない=毛がボサボサしている、ということでお話ししますが、毛艶は牛さんの健康状態を把握する上で非常に大切なチェック項目だと私は思っています。ちょっと難しい言葉では「被毛粗剛(ひもうそごう」や「被毛失沢(ひもうしったく」なんて言ったりもします。
 なぜ毛艶が大切かと言うと、毛艶が悪い牛さんは体の中のどこかの臓器に疾患を抱えている事が多いからです。慢性的な肺炎を持っていたり下痢を繰り返したりするような牛さんは典型的で、他には寄生虫感染や金属異物による創傷などの時にも、牛さんは毛がボサボサになる事があります。また特定の臓器ではなくても、全身性にミネラル(微量元素:カルシウム、亜鉛、銅など)が欠乏している牛さんでも毛艶は悪くなる時があります。
 ここで大切なのは、以上にあげた項目はどれも“慢性的な経過をたどっている(病気や異常な状態が長く続いている)”という事です。つまり、毛艶が悪い牛さんを見つけた場合、その時点で病気の状態が長く続いてしまっているということになります。

 ようやく本題ですが、尿石症もジワジワ牛さんをむしばんでくる事が多いです。少しずつ結石が出来て大きくなってきて、腎臓・尿管・膀胱・尿道を少しずつ傷害していきます。結石が詰まっておしっこが出ないまではいかなくても、結石によって粘膜がチクチク刺激されて小さな炎症がたくさん起きていれば、痛みを伴って餌食いも落ちますし毛艶も悪くなります。
 日頃牛さんを観察していて毛艶が悪い牛さんがいた場合は、尿石症に限らず何か体の中に悪いところがないか、獣医さんに診てもらうのがいいと思います。

20120824

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