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池田哲平のコラム
尿石症を考える(7)

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2012年8月17日

 8)痩せてきた
 この稟告はものすごくアバウトなのですが、農家さんが日々牛さんをよく観察されている賜物だとも言えます。牛さんが痩せるという事は、単純に考えれば餌を食べていないという事ですよね。1頭マスや2頭マスで飼われている牛さんなら餌の残り具合を見ることで気付きやすいと思うのですが、1マスに多頭飼いしている場合では1頭が少し餌を食べないくらいでは他の牛さんが食べてしまって分かりにくい事もあります。今回もそう言ったケースでして、肥育後期の牛さんが1マスに5頭入っている農家さんで「1頭だけ他に比べて少し発育が悪い、と言うよりも少し痩せてきた」と診療依頼がありました。
 結果から先に言ってしまうと、尿結石によって完全にではないけれども尿道が詰まってしまっておしっこが出にくい状態になっていて、慢性的に膀胱に尿が溜まって膀胱炎も併発している様な牛さんでした。尿石症と膀胱炎によってほんの少しお腹が痛い状態が続いていたために、ほんの少しずつ餌を食べないようになってしまい、ほんの少しずつ痩せていってしまっていたんですね。
 尿結石が完全に尿道を塞いでしまえばピタッと餌を食べなくなったり、ひどい腹痛のために立たなくなる事もあるので、こういう場合は逆にすぐに異常に気付くのですが、じわじわと攻めてくるこの症例の様な尿石症の方が気付きにくくて経過も長くなっているので、意外に治りも悪く厄介だったりします。

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