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池田哲平のコラム
尿石症を考える(6)

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2012年8月10日

「(ん~、腹が痛い・・・尿石か?でもさっきぱっと見た時、陰毛は白くなかったよな・・・)」
そう思い、もう一度陰毛を確認。やはり明らかな結石は付いていない。が、若干陰毛が乾燥している。
「一応直検しておきますね」
そう言って直腸に手を入れてみると・・・・・・なんと膀胱はパンパン!尿閉により膀胱は膨満して破裂しそうな勢い。
「尿石けっ!?でも池田、石は付いとらんど?」
「ちょっと待って下さいね・・・・・・(と言って包皮の中を指でゴソゴソ)・・・・・あ、ありましたねぇ。」
そう言って包皮の中から、ゴロゴロと石をかき出す。
「外から見て陰毛に明らかな結石が見られなくても、包皮の中に石が詰まっている事もあるんですよ」
「ふ~ん。で、どげんすっと?手術け?」
「そうですね。ここまで膀胱がパンパンになっているとオペしないとダメですね」
という事でこの牛さんは尿道バイパス手術をする事に(手術の詳しい話はまた別の機会に)。手術により無事排尿し、この牛さんは何とか肥育期間を全うできました。

 この症例では「餌を食べない」というよくある稟告に加え、外部所見上は尿石症を疑わせるよう状態ではなかったのですが、直腸検査を行った事で膀胱が張っているのが分かり、そこから再度陰毛・包皮内を精査することで尿石症が分かりました。排尿できずに膀胱が張ってくると牛さんは(人間も)お腹を痛がり、完全に尿閉してしまうとパタッと餌を食べなくなったりします。
 食べる事が仕事の肥育牛が餌を食べない時は必ず何か異常があり、そして何か怪しいと思ったら直腸検査をしてみる事が非常に大切だと日々自分にも言い聞かせています。

ikeda_20120810

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