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松本大策のコラム
「放牧で気をつけること(4)」

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2009年5月25日


 九州、特に鹿児島では春が本当に短く、すでに夏のような気候です。この時期には牧野にアブが出てきます。アブが放牧牛の血を吸うと、痛みやかゆみでストレスになるだけではなく、もっと大きな問題を抱えます。
 それは、「アブは牛白血病を媒介する」ということです。といっても、アブは牛白血病の牛から血を吸ったあと、くちばし(口吻)が乾くまでに次の牛さんの血を吸った場合にウイルスを伝染させてしまう、と言われていますから、実際は牛さん同士が5m以上離れていると伝染力はないということです。牛舎では白血病抗体陽性の牛さんと陰性の牛さんを5m以上の間隔をあけて飼育することでアブによる牛白血病の伝染を防ぐことが出来ます(もちろん1頭1針を守る、直検手袋を1頭ごとに換える、素手で直腸検査しない、などのルールを守らないと意味はありませんよ)。
 しかし、放牧の場合は牛さん同士の間隔を制御できませんから、アブによる牛白血病の媒介を防ぐことは難しいのです。放牧の際は、牛白血病の抗体が陽性の母牛は牧野に出さない、あるいは抗体陽性牛と抗体陰性牛の牧野を分離し牧野どうしを5m以上離す、などの注意を守ってあげなくてはいけません。
 牛白血病の蔓延した牛群を抱え込む苦労を考えれば、全くたいした苦労ではないはずです。
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