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松本大策のコラム
「放牧で気をつけること(3)」

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2009年5月18日


 放牧する場合、注意すべき点は他にもあります。ひとつは、マダニ類(オウシマダニ(写真上)やフタトゲチマダニ)が媒介するピロプラズマという寄生虫です。ピロプラズマは大型ピロプラズマと小型ピロプラズマの2種類に大きく分けることが出来ますが、いずれも原虫の仲間で、血液中の赤血球に寄生します。貧血を起こしたり肝臓障害を起こすやっかいな虫です。大型のバベシア(写真下: ホリスティックアニマル診療所HPより)という仲間は、法定伝染病に指定されているので、万が一発生が認められれば牛の移動禁止などの措置も執られます。
 しかも現在はピロプラズマに有効な駆虫薬が製造中止になっていますので、感染後の有効な対処が難しいのです。ピロプラズマに対しても牛さんは免疫を作りますから、放牧2年目以降の牛さんは耐性がある場合が多いのですが、生まれた子牛が発育不良になったり、初めて放牧された母牛が流産したりする場合もあります。
 ピロプラズマに対する有効な薬剤がないため、ピロプラズマを媒介するダニ類を牛さんに近づけない要にするのが最も有効です。バイチコールなどの薬剤を入牧時だけでなく定期的に塗布するのは有効です。初めて対策を打つ場合は、出来るだけ間隔を短めにするとより効果的です。
 写真を使わせていただいた八重山家畜保健衛生所や沖縄県は、法定伝染病のバベシアで移動禁止になっていた八重山地区から、バベシアを媒介するオウシマダニを撲滅し、移動制限を解除するという偉業を成し遂げたことで業界では有名です。
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