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松本大策のコラム
「放牧で気をつけること(2)」

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2009年5月11日


 春に放牧をするとき、注意して頂きたい野草があります。牧野には様々な毒草も生えているのですが、この時期に特に注意が必要なのが、僕たち人間も食用にする「ワラビ」です。人間が食べられるのに牛さんが食べると毒になるなんて、なんだか意外に思われるかもしれません。でも、ワラビはいろんな動物で中毒を起こします。
 馬では、秋口にワラビの枯れたものを食べた場合に、アノイリナーゼという有毒物質によって第一胃で作られるビタミンB1を破壊して、ビタミンB1欠乏を起こし(腰フラ病といいます)ますし、牛では汎骨髄労といって骨髄が障害を受けて赤血球が作られなくなり貧血になることがあります。さらにやっかいなのが、牛のワラビ中毒では膀胱に腫瘍形成をする、つまり膀胱内にガンみたいなものを作ることもあるのです。症状はひどい血尿を出して元気がなくなります。この状態になると治療のしようがありません。ワラビはシダ科の植物でどこにでも生えているので、牛さんを放牧する前に見回りをして、群生しているところは取り除いておきましょう。もちろん新芽は人間があく抜きして食べれば問題ありませんよ。
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