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(毎日とは言わないけど…)現場は宿題ばかり!(6)

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2012年7月31日

6) 今日もげんきですかーっ!!

 今年の北海道の夏は割と冷涼な傾向で朝晩は12~13℃まで冷え込む日も多いものの日中は30℃をようやく超す日も出て参りました。中部地方をはじめ関西方面では酷暑が続いておるようですが皆さん、牛さんいかがお過ごしでしょうか?昨年、一昨年と違い今年の夏は北海道の牛さんにとって過ごしやすい気候なのではと感じています。

 牛さんをはじめ動物の体温というのは、代謝による発熱量と体表面などからの熱放散によって一定に保たれているものですが、気温がある範囲(熱的中性圏)を超えて上下すると、熱生産量を変化させることで体温を一定に保とうと頑張るのです。

 皆さんもご存じのとおり、牛さんはルーメン(第一胃)の微生物の働きによって配合飼料や粗飼料を分解し、消化・吸収をしていますが、このルーメンの働きでもう一つ大事な役割があります。それが熱の産生です。牛さんの体温は子牛~育成牛~成牛で若干の変動幅はあれどおよそ38℃台後半かと思いますが、それはあくまでも直腸の温度です。う○ちをした直後の体温はやや高めに出ることが多いと思いますが、体の中心部(核心部)の温度が最も高く保たれているのですね。

 さて外気温がある一定の温度(上限臨界温度)を超えると、ルーメンでの熱産生を抑える方向に向かわせようと様々な行動を牛さんは取ります。水のがぶ飲み、犬のようなパンティング(喘ぎ呼吸)そして採食量の減少。これが困りものですが、もっと困るのが夏場に多い、シャードパッ!!(水下痢)。 去年もそうでしたが今年も今時期は何故か下痢が多いのです。熱もなく、糞便の色・匂いも悪くないですが、せっかくのトウモロコシと麦が粒のまま水下痢の跡に未消化で出てきます。これは体温の上昇で胃・腸の蠕動運動が活発になり、腸管内容物の通過速度が速いことも関係がありそうです…

 暑熱対策といえば、換気・ミストシャワーなど皆さんいろいろ工夫されていると思いますが、私はちょっと違った視点でのご提案です。

 食いの悪い粗飼料は若干短めに裁断&頻回給与

 現場で見ていると特にこの時期、粗飼料で硬い茎の部分や長さの長いものが残餌で目立ちます。消化しにくい草の方が反芻回数が増え、発酵熱が高いからです。そこで牛さんに食べさせている草をもう一度見直して欲しいのです。夏バテ防止のためにもルーメンの健康第一!!と思う次第なのであります。

(つづく)

ワタル(猫)

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