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松本大策のコラム
(番外編)暑い日が続きます

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2012年7月30日

 松本です。冗談じゃないくらい暑い日が続きますね。僕も巡回中はずっとタイベックの抗ウイルススーツ(白くて水も空気も通さないやつ)を着て、N95というこれまたウイルスを通さない(ゼロじゃないけど)マスクをつけたまま、ゴム製の手袋をつけての作業なので、熱気と脱水で死にそうです。みなさんも、水分と塩分は自分が必要と思っている2倍は取りながら作業しましょうね。

 同じように牛さんも夏ばてしています。いったいどうして「夏ばて」が起こるのでしょうか?これについては、まず「疲れ」とはいったいどういう状態なのか?「疲労回復」とは何が起こっているのか?から考えてみましょう。

 まず、疲れとは「体の中に毒素がたまってきた状態」です。この毒素には、まず筋肉が働くときにエネルギー源のブドウ糖が使われて生じる「乳酸」があります。それから、筋肉などの破壊に伴って発生するタンパク質の老廃物であるアンモニアも猛毒です。牛さんの場合は、第一胃でもアンモニアが発生しますから、うまく微生物タンパクに再合成されないと、これも老廃物となります。それから、忘れてはいけないのが、消化管内で発生する「消化管内毒素(ヒトでは腸内毒素といいますね。牛さんでは第一胃での発生が多いから「消化管内毒素」と言います)」です。あと、ストレスや免疫の働くときなどに発生する「活性酸素」というのも最近問題になっています。

 疲労回復というのは、これらの「毒素(疲労物質)」を分解したり排泄したりして、体から毒素を減らすことなのです。これらの毒素のうち、乳酸・アンモニア・消化管内毒素は、おもに肝臓で処理されます。活性酸素については、酸化防止剤としてのビタミンEや抗酸化酵素が解毒してくれるのですが、抗酸化酵素は肝臓で作られます。
 これらの解毒の働きは肝臓の「酵素」が主役なのですが、これらの酵素は、本来牛さんの体温である38.5℃くらいでうまく働くように出来ています。ところが夏になると気温が上昇して、牛さんの体温も高めになって酵素の働きが鈍り、毒素の分解がうまくいかなくなるのです。これが「夏ばて」の正体です。加えて、暑さでストレスも増えて活性酸素の量も増えますからね。

 ですから、牛さんの夏ばてを防ぐには、1:なるべく涼しくしてあげる、2:パンカルや乳肝のような肝臓の活性を上げてくれる添加剤を与える、3:アースジェネターやビオスリーなどの生菌剤で消化管内細菌を整えて消化管内毒素を減らす、4:活性酸素の解毒のためにビタミンEなどを給与する、などの処置をしてあげると効果的なのです。

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