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松本大策のコラム
「牛舎の危険を点検しよう(2)」

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2009年1月19日


 新年のご挨拶で一回飛びましたが、今回はまたもや「牛舎の危険を点検しよう」のお話しです。みなさんの所の牛舎は、釘が抜けかかっていたり、ワクを縛っていた番線(針金の太いやつ)やロープがゆるんでいたりしていませんか?
 牛さんは鉄欠乏型動物とでもいいましょうか、落ちている鉄釘などを自発的に食べちゃうんです。おそらく自然界ではそうやって不足しがちな鉄分を補っていたのかも知れません。でも、誤って食べてしまった鉄釘や針金は、第二胃の壁、特に前の方へ刺さって創傷性第二胃炎を起こしますし、刺さり方が深くなると、創傷性横隔膜炎、創傷性胸膜炎、創傷性心外膜炎と病気のレベルが上がっていきます。
 以前元気がないということで診察したお母さん牛は、頚静脈の拍動という心臓が弱ったときに見られる症状があり、また抗生物質を抜くとすぐに熱が上がる、という症状を繰り返したため、疣贅性心内膜炎(松本コラム11ページ目:「一番怖いイボのお話」参照)を疑って病理解剖した結果、心臓をウイリアムテルのリンゴのように、太い番線が貫いていたことがあります。それでも生きてるものだなぁ、と感心しました。そのような事故を防ぐためにも、釘や針金、抜けかかったボルトなどにはいつも注意しておきましょう。
 針金と同じように危険なのが、ワクなどを縛っているロープや、点滴などを吊したヒモです。そのままにしておくと、牛さんが遊んでくちゃくちゃとガムのように噛んで飲み込んでしまうことがあります。飲み込んだロープやヒモは第一胃で絡まって団子状になりガスの原因になったり、腸で絡んで腸閉塞の原因になったりします。
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