(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
「冬が始まるよ(2)」

コラム一覧に戻る

2008年12月15日


 前回、なにか間違って竹ちゃんに違う原稿を送っちゃって、1回あいたのですが、今回はまた冬場の注意です。

 今回は少し栄養のお話しをしたいと思います。
寒い冬に外から帰って温かい鍋物!いいですねえ。体がぽかぽか温まります。鍋でなくとも、食べ物を食べるだけで体は温まります。冬場は気温が低いので、体温を維持するためにカロリー(熱量)を多めにとらなくちゃいけないのです。「えー、だって一つもお正月は太るんだよ!」とブーたれないの。これも、冬場は寒いので体脂肪を蓄えて寒さに適応しようとする身体の仕組みなんです。
 牛さんの場合は、僕たち「油断すると食べ過ぎる人間」と違って、えさは与えてもらった分しか食べられません。何でも食べる人間と違って、たいていは決まったメニューです。(たまにはオマールエビが食べたい!なんて牛さんがいたら叩きたくなりますけどね(笑)。)人間は何でも食べるので、栄養のかたよりが起こりにくいのですが、牛さんの場合は、注意して観察しておいてあげないと、系統や季節によって栄養のかたよりがでる場合があります。
 最も多いのが、冬場に見られる「カロリー不足」。一年中同じメニューだと、夏場はタンパクとカロリーのバランスがよいえさでも、冬場になると「体温維持のために必要なカロリー」が増えて、本来タンパクと釣り合いのとれていたカロリーが不足してしまうケースがあるのです。特に発育が旺盛な3〜5ヶ月齢の子牛でよく見かけるのですが、そういったタンパクとカロリーの釣り合いが崩れた牛さんでは、毛が荒くなったり陰毛が白くなったりします。また肺炎が蔓延しやすい場合も多く見かけます。これは、本来身につくはずだったタンパク質が、タンパク質を身につける(タンパク同化といいます)ためのカロリーが足りないため、身につけることが出来なくて老廃物のアンモニアという猛毒になって体中を回ってしまうからです。もちろんアンモニアは危険なので、肝臓で尿素に作り替えたり、オシッコの中に捨てたりするのですが、これによってオシッコがアルカリ性になってしまうと、オシッコに含まれるリンとマグネシウムをアンモニアのイオンがくっつけて、リン酸アンモニウムマグネシウムという結晶を作ります。これが尿石で、細かい結晶が陰毛に付着した状態が、陰毛の白色化です。

|