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(毎日とは言わないけど…)現場は宿題ばかり!(3)

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2012年7月10日

3)眼にできもの??

 治療などで頭絡をかけて牛さんを保定しようとすると、牛さんが眼をひんむいて抵抗すること、ありませんか?それこそ眼が飛び出しそうな勢い!!そして写真のように眼球結膜が盛り上がった牛さんを良く見るのです。初めて見た時はできもの!?かと思いました。触った感触は、『ウニ』くらいの柔らかさで波動感があり、充血が見られます。でもいったいこの『ウニ』ちゃんは何者?
 黒目の部分は内側・下方に向いていることから、この『ウニ』ちゃんは普段は眼の裏側にあると考えられます。解剖学の教科書も引っ張り出してきて……どうやら『ウニ』ちゃんの正体は、【外側直筋】と呼ばれる眼球を動かすのに関わる筋肉のうちの一つではないかと思われます。正確には、眼の一番外側にあり保護する役割を果たしている強膜と呼ばれる部分と外側直筋を結んでいる腱ではないかと思います。

guest_20120710

 そしてこの『ウニ』ちゃん。なぜかビタミンA欠乏で治療する牛さんに多い気がするのです。こんな諸々の状況から一つのストーリーを考えてみました。

 頭蓋内圧上昇(興奮状態orビタミンA欠乏)
   ↓
 外転神経(Ⅵ)麻痺
   ↓
 外側直筋麻痺
   ↓
 眼球突出

 何のことか良く分からないぞ!と思われた方も多いかと思います。眼に付いている筋肉は図からもわかるように多くの種類があるのですが、【外側直筋】だけが外転神経と呼ばれる神経に支配され、他の筋肉は全て動眼神経と呼ばれる神経に支配されているのです。
 要するに、『ウニ』ちゃんの筋肉だけが違う神経によって動いていて、さらにこの神経の働きがうまくいっていないと考えられるのです。これが一時的な興奮によるのか、それともビタミンA欠乏によるのかは今後も検証が必要ですが、私たちも含めて動物の体は絶妙なバランスの基に成り立っているのですね!

(つづく)

ワタル(猫)

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