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松本大策のコラム
「免疫のお話(3)」

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2008年10月6日

 免疫は、様々なバイ菌やウイルスなどの病原体から身体を護ってくれる大切な働きです。しかし、いつも一定の強さで防御できるかというとそうではありません。
 みなさんも「ストレス」という言葉をよく耳にすると思います。曖昧な言葉ですが、自分にとって都合の悪いいろんなできごと(気候の急変とか、受験のプレッシャーとか、イヤな上司とか)を総称していると思ってもらうとよいかも知れません。
 「ストレス」がかかった時、生体は「副腎皮質ホルモン(ステロイドということも多いです)」というホルモンを分泌して、血糖値を上げたり炎症反応を抑えたりして身体を防御しようとします。しかし、副腎皮質ホルモンというのは、一生懸命バイ菌と戦う「免疫」までも抑制してしまうのです。
 免疫のお話の1回目に、臓器移植の際に免疫が働くと、他人から移植した臓器が定着できないので「免疫抑制剤」というのを使う、というお話をしましたね。じつは、この免疫抑制剤というのが、「副腎皮質ホルモン」そのものなのです。ストレスがかかると免疫が抑制されてしまうのも無理はないですね。牛さんのストレスの中でも、人間関係と同じ「群編成ストレス(群れを作る時に闘争やいじめなどで発生するストレス)」がもっとも大きな問題になります。 群れを作ると、15分くらいから免疫が低下し始め、2週間目で最低(通常の半分くらいといいます)に低下し、3週間後くらいにようやく戻るかどうか、というくらい免疫が抑制されるそうです。遠方から導入した素牛など、輸送直後が一番疲れているはずなのに、肺炎が増えてくるのは導入後10日〜2週間目くらいですよね?これは、群編成ストレスで免疫がもっとも落ち込む時期なのです。
 ストレスで分泌される「副腎皮質ホルモン」は、他にも母牛で流産させたり、出荷の肥育牛で肉色を悪化させたりすることもあります。いかにストレスを防ぐことが大切か解りますよね。
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