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松本大策のコラム
「免疫のお話」

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2008年9月22日

 「免疫」という言葉は皆さんよく耳にすると思います。でも、本当のところ、免疫というのはちょっと小難しくて複雑なものなのです。この「やっかいな」免疫について少しだけしっかり知っておくと、牛さんの管理や病気の予防などのいろいろな場面で発想が広がっていきます。免疫の働きは、機能や種類などいろんなお話が絡みまくってしまうのでこんがらがりやすいのですが、一度おさらいのつもりで一緒に考えてみたいと思います。
 まずは免疫について「働き(機能)」の面から考えてみることにしましょう。免疫の働きを簡単にいうと「ばい菌をやっつける力」と思っていただければオーケーです。もう少し詳しくというか本質に近い言い方をすると「自己と非自己の認識」ということになります。うわー、なんかかっこいい、っていうか小難しいですね。簡単に言うと、「自分と自分じゃないものを見分ける働き」みたいなことでしょうか。
 これは、生きていくためにはとても重要な働きなのです。自分と自分じゃないものを見分けられるから、進入してきたバイ菌だって見つける事ができるのです。
 しかしながら、この働きのために不都合が起こる場合もあります。たとえば臓器移植の場合を考えてみましょう。移植してもらう臓器自体は「他の誰か」のものですよね。もちろんお医者さんは、臓器型といって臓器の細胞の「血液型」みたいなのものを調べて、同じような臓器型の人のものを移植するわけですが、そうはいっても所詮は自分じゃない「他人」のものです(たとえ親兄弟でも)。そこで「免疫」が働くと、「あーっ、こいつ俺じゃないしー。追い出さなきゃ。」ってことで、せっかくお医者さんが移植してくれた臓器を破壊してしまうのです。それでは困ってしまうのでお医者さんは「免疫抑制剤」という文字通り免疫の働きをじゃまするお薬を使って移植臓器を守るのです。 
 免疫抑制剤については、もう少し興味深い部分があるのですが、今日のお話は「免疫というのは自分と自分じゃないものを見分ける力なんだ」ということをしっかり押さえておいてください。
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