(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第877話:阿久根の夏が変わった ~データで見えてきた“長い夏”~

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2026年5月26日

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最近、現場で本当によく聞く言葉があります。
「なんだか昔より暑くなったよね~~」
「5月なのになんだかちょっと暑くね??夏が心配になってきた」

おそらく現場に携わっている方の多くが、ここ10年くらいで気候の変化を強く感じているのではないでしょうか。実際、小生も往診や巡回をしていて、以前とは“暑さの質”が変わってきているように感じています。昔は「真夏だけ暑い」という印象でした。しかし最近は、「春から暑く、秋まで暑い」。そんな感覚です。

そんなことを何となく思っていたら、先日弊社にこられたメーカーの方からシェパードがある鹿児島県阿久根市の気温のデータをいただきました。非常に見やすいので少し見ただけで明らかに阿久根市が暑くなってきている事がわかり、逆に小生はちょっと冷えました。

そこで今回は、鹿児島県阿久根市の2000年~2025年までの気温データを整理してみました。対象としたのは、 25℃以上(夏日)、 30℃以上(真夏日)、 35℃以上(猛暑日)の日数です。

データを見て最初に驚いたのは、“夏の長期化”です。
以前の感覚では、7月〜8月が真夏であり、9月後半になると少しずつ涼しくなっていくイメージでした。しかし現在の阿久根では、その感覚がかなり変わってきています。特に象徴的なのが10月です。2000年ごろの10月の夏日(25℃以上)は10日前後でした。もちろん暑い日もありますが、「秋」を感じられる日が普通にありました。ところが近年は状況が違います。2024年と2025年では、10月の夏日が21日。つまり、10月の約3分の2が25℃以上です。昔なら長袖を着始める時期に、現在は普通に汗をかいている。実際、10月でも牛舎内はかなり暑く、ファンの回転数をおとすタイミングに悩むことも増えてきました。ちなみに2024年、2025年共に9月の真夏日は21日。これまた昔と比べて非常に暑い9月になっていました。

さらに興味深いのは、6月の暑さです。2025年の真夏日(30℃以上)を見ると、6月だけで9日発生しています。2000年代前半では、6月に30℃以上がほとんど無い年も多かったことを考えると、かなり大きな変化です。現在は、「夏が来るのが早い」のではなく、「春と秋が短くなっている」とも言えるのかもしれません。

そして、畜産現場にとって重要なのは、気温の変化そのものではなく、“牛さんへの負担が増えている”という点です。牛さんは高温に弱い動物です。暑熱ストレスの影響を非常に受けやすく、採食量低下、受胎率低下、免疫低下など様々な問題が発生します。
以前であれば、「夏を乗り切れば回復する」という感覚がありました。ところが現在は、9月も暑い。10月も暑い。

この影響は、実はかなり広範囲に及びます。例えば繁殖。夏場の受胎率低下は以前から知られています。しかし最近は、秋になっても受胎率がなかなか戻らないケースがあります。これは単純に「技術の問題」ではなく、暑熱ストレスの長期化が背景にある可能性があります。
また肥育でも、夏場の採食低下、暑さによる急性の呼吸器疾患など、“夏の疲れ”を引きずる牛が増えている印象があります。診療先のとある肥育牧場ではこの時期にとにかく事故が多発。「魔の10月」といわれています。

特に阿久根のような海沿い地域は、単純な気温以上に“湿度”の影響が大きい地域です。昼間の最高気温は内陸部より低くても、湿度が高く、夜の気温が下がりにくい。これが非常につらい環境になります。人様でも、夜が涼しいと体がかなり楽になります。しかし牛さんは夜間に熱を放散し、体を回復させています。つまり、夜間温度が高い状態が続くと、暑熱疲労が蓄積し続けるのです。

今回の阿久根のデータを見ていると、単なる「暑い年が増えた」というより、気候帯そのものが少しずつ変わってきているような印象を受けます。そして重要なのは、この変化は一時的ではなく、“今後も続く可能性が高い”という点です。今ちらっとネットニュースを見ると「スーパー・エルニーニョ」などという言葉も出ていました。どうなることやら。とにかく暑熱対策は今年も必須ですね。

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