2026年6月2日 *********************************************************** この制度変更は、近年のワクチン接種後の発生事例の分析結果を踏まえたものであり、適切なワクチン接種によって十分な免疫を獲得した症状のない豚は感染拡大のリスクとならないという専門家の結論に基づいています。これまでの全頭殺処分は、防疫上は非常に確実な方法である一方、発生農場にとっては甚大な経済的損失をもたらしてきました。長年かけて育ててきた繁殖豚や肥育豚を一度に失うことになり、その後の経営再建にも長い時間を要していました。また、家畜防疫にあたる獣医さんや関係者のかたがた、そして近隣の住民の方々にとっても、全頭殺処分は様々な面ですさまじい負担となっていました。 新しい制度では、殺処分の対象となる豚が明確に定められています。まず、ワクチン免疫が成立していない豚です。具体的には未接種豚や接種後20日未満の豚、発育不良などにより十分な免疫獲得が期待できない豚が該当します。また、臨床症状が認められ、PCR検査によって陽性が確認された豚も当然ながら殺処分の対象となります。さらに、家畜防疫員が必要と判断した豚も対象となります。例えば、県の指示に従わずワクチン接種が適切に行われていない場合や、農場内にウイルスが広範囲に浸潤していると判断された場合には、従来どおり大規模な殺処分が実施される可能性があります。つまり、選択的殺処分は無条件に適用されるものではなく、日頃から適正なワクチン接種と飼養衛生管理が行われていることが前提となります。 発生農場では、まず感染拡大状況を把握するための検査が実施されます。全頭に対して臨床検査を行い、異常が認められた豚についてはPCR検査などの精密検査が行われます。その後、殺処分対象となった豚の処分を原則1週間以内に実施し、農場内の消毒を1週間間隔で3回行います。この一連の防疫措置によって農場内のウイルス排除を進めることになります。 今回の制度改正で特に注目すべき点は、防疫措置完了後の取り扱いです。これまでは発生農場全体が長期間にわたり経済活動を停止せざるを得ませんでしたが、今後は発生からおおむね3週間後、防疫措置が完了した段階で、症状のない豚についてはと畜場への出荷や子豚の肥育農場への移動が可能となります。その後も約3か月間は移動制限や毎日の報告徴求により監視が継続されますが、農場経営を完全に停止する必要はなくなります。この点は養豚農家さんにとって非常に大きな意味を持つ制度変更と言えるでしょう。 今回の法改正は、豚熱対策が「感染したら全て処分する」という時代から、「ワクチンによる防御を前提にリスクを管理する」時代へ移行したことを示しています。その一方で、適切なワクチン接種が実施されていない農場では、これまでと同様に全頭殺処分となる可能性があります。今後はワクチン接種記録の管理や接種漏れ防止、日常的な健康観察、飼養衛生管理基準の遵守がますます重要になることは間違いありません。 豚熱は依然として養豚産業に大きな脅威を与える疾病ですが、科学的知見の蓄積によって防疫のあり方も進化しています。今回導入された選択的殺処分制度は、防疫と経営の両立を目指した新しい取り組みであり、今後の家畜防疫の方向性を示す重要な制度改正と言えるのではないでしょうか。養豚農家にとっては、「発生しない農場づくり」に加え、「発生しても被害を最小限に抑えられる農場づくり」がこれまで以上に重要になっていきます。 ちなみに、牛さんの分野では輸出が極めて重要な戦略として位置づけられているため、現時点では従来の方針が継続され、新たにこのような対応が取られる可能性は低いと考えています。
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