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橋本匠護のコラム
牛の治療の際は、どんなエサが良いのか

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2026年5月22日

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牛の治療というと、注射や飲み薬などの“薬”をイメージすることが多いと思います。もちろん薬は非常に重要です。しかし実際の現場では、「エサ管理」が回復を左右するケースも少なくありません。

私自身も診療の中で、

「この牛は薬だけでは治るのに時間がかかりそう・・」
「一度良くなっても再発しそう・・」

と感じた際には、エサのバランス調整などを農家さんへお願いすることがあります。

人の医療では、「療養食(療法食)」という言葉があります。病気の治療や回復を目的として、エネルギー、タンパク質、ミネラルなどの栄養成分を病状に合わせて調整した食事のことです。

獣医療の分野でも同じような考え方があります。特に犬や猫では、腎臓ケア用や皮膚ケア用など、病気に合わせた専用フードが多く販売されています。

一方で、牛では犬猫ほど「病気専用フード」が一般的ではありません。しかし実際の現場では、病気や症状に応じてエサ内容を調整することで、治療をサポートできる場面があります。

ということで、今回のコラムからは、牛における“療養食”について紹介していければと思います。

牛で療養食を考える前提として、個人的に重要だと思っているポイントが2つあります。

1つ目は、「なんでもかんでもエサを変えないこと」 です。

治療のためだからといって、すぐにエサを変更すれば良いわけではありません。

牛では、肥育牛なのか繁殖母牛なのか、さらに育成期や泌乳期などのステージによって、必要な栄養バランスは大きく異なります。そのため、治療目的だからといってエサをコロコロ変更すると、かえって本来の目的である生産性を落としてしまうこともあります。

また、複数頭を同じ部屋で管理している場合は、治療牛だけエサを変更することが難しいケースもあります。その場合、同居牛を含めてエサを変更する、もしくは治療牛を隔離するといった対応が必要になります。これは農家さんにとって、手間やコストの増加にもつながります。

そのため、現在の飼料内容のままでも問題なく治療できそうであれば、無理に変更しません。可能であれば、そのステージに合ったエサで管理するほうが良いと思います。

そして2つ目は、「牛が実際に食べるエサを与えること」 です。

治療中の牛では、食欲が落ちていることも少なくありません。どれだけ栄養バランスを整えたエサでも、食べてもらえなければ栄養不足となり、回復は遅れやすくなります。

だからこそ、まずは“食べること”を優先する。実際には、「何を与えるか」の前に、「何なら食べてくれるか」を考える場面も多いです。

その上で、病態に応じて栄養バランスを調整していく。それが牛における“療養食”の重要な考え方だと思っています。

次回以降のコラムでは、この2つの前提を踏まえながら、肺炎や腎不全、繁殖障害など、実際に現場で私が農家さんへお願いしている「病気ごとのエサ管理」の一例について紹介していきたいと思います。

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