(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第872話:やっとデータが見えてきた!

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2026年4月14日

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今回のコラムでは、日本家畜人工授精師協会さまが公表した全国規模の受胎率調査についてお話ししたいと思います。
まず率直に申し上げて、このデータの公開は現場にとって「極めて意義の大きい出来事」です。これまでの現場では、「授精や移植の成績が良いのか悪いのか分からない」「他との比較ができない」「受胎率が年々良くなっているのか悪くなっているのかわからない」といった状況が長く続いてきました。

そのような中で、今回の調査は、過去10年間存在しなかった全国規模の「公的な受胎率」を提示したという点において、極めて大きな一歩であると小生は思っています。ここで強調したいのは、データは単なる数字の集積ではないという点です。データとは、「比較」と「改善」を生み出す起点そのものです。滅茶苦茶大事なものだと小生は思っています。

例えば、全国平均との差を把握できる、改善すべきポイントを考えるきっかけになる、技術および飼養管理の良否が可視化されるなどなど。このように、データの存在は“感覚の世界からの脱却”を可能にします。このような基準データが整備されれば、受胎率は必ず向上します。

理由は極めてシンプルです。
① 比較対象が生まれる
② 問題点が明確になる
③ 改善行動が加速する

これは畜産に限らず、あらゆる産業に共通する普遍的な構造です。むしろこれまでは、「改善したくても基準が存在しなかった」状態であり、その制約がようやく解かれ始めたといえるかもしれません。なお、今回の調査は延べ頭数ベースであり、産次・季節・胚の種類といった詳細条件は現時点では整理されていません。しかし、これは決して欠点ではありません。むしろ「まずは広くデータを収集し、その後に精度を高めていく」という現実的かつ戦略的な第一歩と捉えるべきです。現場をご存じの方であれば理解できる通り、初期段階から完全なデータ収集を実現することは不可能です。重要なのは、継続的な蓄積と改善によってデータの質を高めていくことにあります。今回のデータは非常に示唆に富んでおり、一度で語り尽くせるものではありません。そこで今後は数回に分けて、本コラムにて詳細な分析と現場への応用について紹介していきたいと考えています。

これは単なる「データ公表」ではありません。
日本の繁殖技術を次のステージへと引き上げるための“基盤整備”です。そしてその成果は、最終的に現場の利益として確実に還元されるはずです。

データが存在する世界と、存在しない世界。
その差がこれからどのように現れてくるのか?
非常に楽しみな局面に入ったと思っています。

ちなみに、シェパードで実施しているOPU受精卵の受胎率は、58.5%(鹿児島)という結果でした。令和5年度の全国確定値(39.5〜39.6%)と比較すると、およそ20ポイント高い水準となっています。もちろん、地域条件や個体差、管理状況によって結果は変動するため単純比較はできませんが、「適切に設計されたOPUプログラムは、十分に実用的な繁殖手段になり得る」という一つの指標にはなると考えています。
さらに今年度は、暑熱期(6月〜9月)における受精卵移植に対して、乳用種を対象とした奨励施策が予定されています(残念ですが和牛受精卵は除外)。夏場の受胎率低下は多くの酪農家さんにとって悩みの一つですが、このタイミングを牛群改良まで含めた戦略として捉えることも一つの考え方かもしれません。
OPUはまだ一般的とは言えない技術ではありますが、実際の現場では「暑熱対策」と「遺伝的改良」を同時に進める手段として、徐々に選択肢の一つになりつつあります。もし、「自分の牧場でどの程度活用できるのか」「コストと効果のバランスはどうか」といった点にご関心があれば、一度情報整理だけでもしてみる価値はあると思います。現場に合わせた現実的な導入方法については、シェパードでも個別にご相談をお受けしています!

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