(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第542話「暑熱対策~水と塩分とミネラル補給~」

コラム一覧に戻る

2026年4月2日

***********************************************************
シェパードイチオシ情報
■ 尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など
***********************************************************

***********************************************************
シェパードイチオシ情報
■ 尿でわかる!マイコトキシン検査はじめました
尿中カビ毒検査とは(チラシ) / ご依頼の手順など
***********************************************************

 夏は耳にタコができるくらい「水分補給」というワードが飛び交います。それに加え、近年では「塩分・ミネラル補給」の大切さも併せて紹介されることが多くなりました。私たち人間は発汗によって体内の熱を外に逃がします(汗が乾くときに皮膚表面の熱が空気中に奪われていきます)。もちろん、汗のほとんどは水分なのですが、その中には塩化ナトリウム(塩分)やマグネシウムなど(ミネラル)が含まれており、汗をかけばかくほど体内から失われていきます。また、塩分が失われているときに水だけを飲んでも、体は塩分濃度を維持するために水を出そうとしてしまいます。こうしたことから、汗をかく夏は「水分、塩分、そしてミネラルの補給が大切」と頻繁に言われるようになったのです。汗をかいても水を飲むな!と言われていた昭和の教育が懐かしいですね(遠い目…)

 ところで、牛は人間よりも汗を分泌する汗腺が少ないため、暑い夏でも私たちのように汗をびっしょりとかくことはありません。基本的には呼吸によって体内の熱を外に逃がそうとします。ただ、体表面全体を使った汗の蒸発に比べると、呼吸による放熱は効率が悪いといえます。効率が悪い分は回数で放熱量を稼ぐしかありませんので、暑い時期は体を揺らしながら呼吸したり、口を開けて呼吸をしたりする様子が見られるようになってきます。

この呼吸数の増加が、牛にとっては非常に厄介な問題を引き起こします。
具体的には
① 水分の喪失
私たちも口呼吸をしていると、すぐに口の中や喉が渇いてしまいますよね。それだけ、口呼吸は水分をより多く失うことになるといえます。暑いときは開口呼吸をする個体はどうしても増えてしまうので、人間と同じように十分な水が飲める環境は整えておくべきでしょう。とくに、水槽が汚れていないかは重要なポイントです。あまりにも汚れている水であれば、牛も飲みたくありません。夏は水を十分飲んでもらうために、水槽の掃除を頻繁に行ってあげてください。
② 電解質の喪失やアシドーシスの誘発
牛の唾液には多くの電解質が含まれています。通常は口の中に分泌された唾液のほとんどは嚥下によって再び消化管内に戻り吸収されていきますので、“プラスマイナスゼロ”の状態が維持されます。しかし、暑さによって呼吸数が上がっていると、飲み込み回数も減り、再吸収量がどんどん減ってしまいます。結果としてマイナス(電解質の喪失)につながってしまうのです。また、呼吸に時間を割かれるため、その分反芻時間が減ることも唾液分泌量そのものが減る原因となっています。特に唾液にはアルカリ成分である重炭酸がふくまれており、それがルーメンに戻ることでルーメン内の酸を中和しアシドーシスを予防してくれるという重要な役割があります。アシドーシスに陥れば、第一胃粘膜が傷むだけでなく、エンドトキシンの流入による各臓器の損傷にもつながります。牛にとって唾液はそれほど重要なものなのです。

しかし、水を飲むだけではこれらの問題は解決しません。むしろ、排尿量の増加によってミネラルや塩分がどんどん尿に出ていってしまう悪循環に陥ってしまう可能性もあります。そこで夏は固形塩が必須アイテムとなってきます。固形塩を舐めることで、発汗や排尿によって失われる塩分だけでなく、カリウムやマグネシウムといったミネラルも同時に摂取することができます。また、唾液の分泌も促進しますので、アシドーシス予防にも一役買ってくれます。ミネラル分は添加やエサに混ぜて給与することもできますが、固形塩の魅力は「欲しい個体が欲しいタイミングで摂取できる」点にあります。過剰摂取の心配も少ないですし、長い目でみればコストも低く抑えられます。特に、固形塩があっという間になくなるような牧場では視覚的に「今、ミネラルが足りていないんだ」と気づくきっかけにもなります。少なくとも、暑熱期は繁殖牛、肥育牛に関わらず、各パドックに設置しておくことをおすすめします。

 水だけでなく塩分とミネラル補給が大切です!と人間界ではよく言われますが、牛の世界ではきれいな水と固形塩が大切です!!!と言えるのではないでしょうか。本格的に暑くなる前に、牧場の水槽の状態と固形塩の在庫チェックをしっかりと行っておきましょう。

 

***********************************************************
今週の動画
子牛の胸腺をチェック【触診】


***********************************************************
今週の動画
子牛の胸腺をチェック【触診】

|