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松本大策のコラム
「触らぬ神に...」

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2008年8月25日


 右の写真は、肥育牛で時折見かける歯肉炎(というか正式な病名はついていません)です。初診時は上の写真の様に歯茎が腫れて歯が抜けかかっていました。歯茎からの細菌感染だろうという診断で、抗生物質とデキサを使って治療したところ2診後には歯茎の腫れもずいぶんと引いてくれました。しかし、この牛さんはそれでは終わらず、しばらくすると再発して以前よりも歯茎の腫れもひどくなり、治療すると改善する、という状態を繰り返しました。
 細菌の叩き方が弱かったのか?と反省し、強い抗生物質を使い、治ったように見えてもしばらく処置を続けたりもしたのですが、それでも再発はやみませんし、次第に治療効果も得られにくくなってきました。3ヶ月も経つと下の写真のような恐ろしい姿になってしまったのです。途中で歯が抜け落ちたため、歯の抜けた孔にピンセットを入れてみると。柄の方まで10cmくらい抵抗もなく入っていきました。内部の掻爬もていねいにやって考えつく様々な処置を施したのですが悪化の一途をたどりました。結局この牛さんは、治癒の見込みなしということで痩せないうちに出荷しました。
 細菌感染だったら抗生物質でたたいて..、という認識の甘さと化膿症の怖さを実感した症例でした。
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