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戸田克樹のコラム
第537話「暑熱対策~なぜ暑熱ストレスは悪いのか&まずは今あるもので対策~」

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2026年2月26日

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 鹿児島では梅の花が咲き誇っています。九州はすでに春がやってきています。もちろん、まだまだ雪に囲まれた地域もあるでしょうが、これからは確実に季節が変わっていきます。そして、春の次にやってくるのは暑熱の王、夏です!夏の暑さをどう乗り切るか、暑くなってからでは遅いので、早めに対策をとっておきましょう。

 具体的な対策を考える前に、なぜ暑熱が問題となるのかを考えてみましょう。暑くなると日中の活動量が落ちるため、発情行動が鈍化します。外気温の上昇に伴い膣や子宮内温が上がるため、精液や胚が受けるダメージが大きくなり受胎率が低下します。暑い時間帯の採食量が減少する一方で、涼しい時間帯に固め食いをする機会が増えます。また、発酵熱を抑えるため粗飼料の採食量が低下します。伏臥で熱がこもるのを嫌がるために起立時間が延び、反芻時間が減り唾液の分泌量も減ります。また、体温が上昇するために酵素活性も低下し、代謝が落ちてしまいます。もちろん、搾乳牛であれば泌乳量の低下は避けられません。

 つまり、暑熱ストレスを受け続けると、繁殖成績の悪化、ルーメンアシドーシスの増加(アルカリ性である唾液の減少と固め食いによるルーメン内pHの低下)、アシドーシスによる肝臓への負担、代謝効率の悪化による増体率の低下といったさまざまな問題が生じることになるのです。これだけの問題が「ただ暑いだけで起こる」となると、その暑さを和らげることは牛群の成績改善に直結することになるのもうなずけます。

 暑熱対策にはいろいろな方法が紹介されていますが、あまりコストをかけられないのも事実です。そこで、今回は「今あるものを利用して、コスト無しでできること」を考えてみました。下記に挙げた項目について、機会を改めてより具体的にどういった対策ができるのかを考えていきます。

①扇風機のそうじ
 暑いときには風を浴びることが大切です。風を浴びることで体表の熱を外に逃がすことができます。扇風機の効力を低下させる要因はずばり「汚れやほこり」です。特に、置き型扇風機のようにカバーがあるものでは大量のほこりがついてしまっていることがあります。

ほこりも積もればなんとやら・・・。こんな状態では風量が一気に低下します。逆に、しっかりと掃除してあげれば、その扇風機が起こすことができる最大限の風を牛舎に提供できるのです。掃除にかかるコストは道具、あなたの時間と労力のみです。もし扇風機のカバーが汚れていたら、スイッチを入れる前にしっかりと掃除してあげましょう。

②空気の通り道を確保
 意外と盲点なのが、空気の通り道をふさいでしまっているケースです。冬の間に風よけにおいていたロールがそのままになっている場所はありませんか?

もし、寒冷ストレス対策で風が通らないようにしている箇所があれば、本格的に暑くなる前にそれらを除いておきましょう。また、出入り口以外が壁で塞がれているような環境では、空気の流れが止まってしまうため舎内の換気量は上がりません。密閉されている建物であれば、壁の一部を外したりして風が抜けていく場所を作ってみましょう。

③給餌時間の調整
 暑い時間に食べないのであれば、こちらが給餌時間を調整するしかありません。食べないエサをずっと置いていると、唾液や水などで汚れたものが変敗していきます。ハエがたかるのもよくありませんね。このようなエサはにおいが悪くなり、牛の食欲が低下することも少なくありません。粗飼料もしっかり食べてもらうために、早朝や夕方など太陽熱の影響が少ない時間帯にエサをやるのもひとつの方法です。乾物摂取量が落ちなければ、アシドーシスの影響は小さくなり、肝臓へのダメージも小さくすることができます。さらに乾物摂取量を上げるために、給餌回数や掃きよせの回数を増やすというアクションも有効です。

④水槽をきれいにしておく
 暑いときはのどが渇きます。さらに、冷たい水は体内の温度を下げるのにも効果的です。しかし、水槽がもし汚れていたら、体が求めていても「飲みたくない」気持ちが勝ってしまい飲水量が低下してしまいます。

喉が渇いている状態では飼料も食べられないため、採食量も大きく低下します。体が欲しているときに十分な水が飲めるよう、水槽の状態をきれいに保っておきましょう。中の水をこまめに抜いて掃除する、鼻水などで汚れていたら水を抜いて新しい水を入れる、といったことを暑熱期は意識的に行い、水をしっかりと飲める環境を整えてあげてください。

⑤牛群密度の調整
 牛自身だって熱源になりえます。人がいっぱいいる部屋では冬でもその部屋全体が暖かくなるように、牛もぎゅうぎゅうに詰まっているとより暑くなります。牛舎で管理する頭数の調整は非常に難しいですが、出荷前の牛や分娩直前の牛など、牛にとって大切な時期だけ限定的に密度を低く抑えることができないか、牛舎構造を改めて眺めてみてはいかがでしょうか。

 新しい取り組みも大切ですが、まずは持っているものを最大限に活かすことが大切です。「冬が終わった」と感じたら、牛舎環境が夏に向けて最適化されているかをひとつずつ確認してみましょう。
 
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