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蓮沼浩のコラム
第858話:世の中の流れ その5

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2026年1月6日

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前回は和牛受精卵子牛の出生頭数の推移と今後の和牛頭数を考えるうえで、国がいつ受精卵に対して本格的な政策を打ち出すのか?これが一つの重要な分岐点になるのではないか?という話をしました。今回は、その先を少し整理して政策が「動いた場合」と「動かなかった場合」の2つのシナリオについて考えてみたいと思います。

シナリオ①:国が和牛受精卵に対して明確な支援策を打ち出した場合
もし国が和牛受精卵移植に対して一定額の補助金を出すという政策を打ち出した場合、現場は比較的早い段階で反応すると考えています。理由は単純で受精卵は「時間をお金で買える手段」だからです。繁殖素牛の導入や更新では、どうしても子牛が市場に出てくるまでに時間がかかります。
一方、受精卵であれば、移植からおよそ1年たらずで子牛が誕生し、その後すぐに流通に乗せることができます。

補助金が付けば、
 • 受精卵コストの心理的ハードルが下がる
 • 繁殖農場や酪農場が受精卵に取り組みやすくなる
 • 一部の肥育農場も自家繁殖・受精卵導入を検討し始める
といった動きが出てくる可能性があります。

ただし、ここで重要なのは、「どこでも誰でも一斉に増える」わけではないという点です。
受精卵は万能ではありません。母牛の状態、管理レベル、移植技術、分娩管理、子牛管理。
これらが一定水準に達していない農場では、受胎率も成績も安定しません。

結果として、
 • 管理レベルの高い農場は、より有利に
 • 管理が追いつかない農場との差は、むしろ広がる
という構図になる可能性もあります。

政策が動いた場合、「和牛頭数は下げ止まる、もしくは緩やかに回復する」。そして頭数が増えてくることで子牛価格が徐々に下がってくる。肥育農場と繁殖農場の利害がぶつかりそうです。いくらぐらいの平均価格を落としどころとするのでしょう。とにかく、農場間の格差は確実に拡大する。そんな未来をイメージしています。

シナリオ②:国が受精卵に対して明確な支援策を打ち出さなかった場合

では、政策が大きく動かなかった場合はどうなるでしょうか。この場合、和牛子牛頭数の減少トレンドは想定よりも長く、そして静かに続いていく可能性が高いと考えています。高齢化、後継者不足、飼料価格の高止まり。これらの構造的な問題は、短期間で解決するものではありません。

受精卵という選択肢は存在していても、
 • コスト負担が重い
 • 成績が安定するまで時間がかかる
 • 失敗したときのリスクが高い
こうした理由から、受精卵の導入は一部の農場に限定され続けるでしょう。

結果として、
 • 和牛子牛頭数は減少
 • 子牛価格は高止まり、もしくは上昇
 • 肥育農場は導入コスト増

という流れが、さらに進んでいくと考えられます。このシナリオでは、「頭数を増やす」というよりも、限られた頭数でどう利益を出すかという視点が、より強く求められるようになります。
 • 繁殖成績の安定
 • 子牛事故率の低下
 • 育成・肥育成績の底上げ

こうした足元の管理力がそのまま経営の明暗を分ける時代のように思います。まあ、これらの事は今までの小生の限定的な情報を基にした勝手な妄想であり、未来はもちろんわかりません。予想外の展開になるかもしれません。どうであれ、今年が少しでも良くなるように日々の仕事を粛々とやるしかなさそうです。

本年も内容はトンチンカンでも1%ぐらい皆様のお役に立てるようなコラムが書ければ嬉しいなと思いながらやっていきますので、どうぞよろしくお願いいたします!
 
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今週の動画
【軟膏の応用】蹄病軟膏の使い方

和牛の世界では、削蹄師さんがメインユーザーとなる蹄病軟膏。
しかし、皮膚病やケガにも使える万能軟膏でもあることをご存知でしょうか。
和牛の場合は蹄病も少ないため活躍の頻度が少なめな軟膏ですが、もっといろいろな場面で使われてもよいように思うのです。

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