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第857話:世の中の流れ その4 |
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2025年12月23日
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2024年5月から、J-milkさまより毎月の和牛受精卵子牛の出生頭数が公表されるようになりました。まだデータの蓄積は少ないものの、この数字を追っていくことで、和牛受精卵子牛の頭数動向をある程度つかむことができるようになってきました。
現在までのデータをざっくりとグラフ化してみると、次のような傾向が見えてきます。

少ない月でおよそ4,800頭、多い月で6,700頭程度。
5月を底に、8月から9月にかけて頭数が増加し、その後は減少に転じている傾向が認められます。今年のデータはまだ10月分までしか公表されていませんが、この流れでいくと、来年2月ごろまで頭数は減少していくのではないかと考えています。
全国の和牛受精卵移植頭数の正確なデータを把握しているわけではないので断定はできませんが、少なくとも「劇的な変化」が起きている印象は、現時点ではありません。ただし、今後の大きな前提として、和牛子牛の頭数そのものは確実に減っていくという流れがあります。そのような流れの中で、非常に重要な役割を果たすのが、この和牛受精卵子牛です。
受精卵を活用すれば、子牛の頭数は理論上、比較的短期間で増やすことが可能です。
例えば、1個の受精卵移植に対して3万円の補助金を付けると仮定します。もし4,000頭の子牛を増やしたいと考えた場合、仮に受胎率を40%とすると、必要な移植頭数は次のように計算できます。
4,000 ÷ 40 × 100 = 10,000頭
この10,000頭の移植に対して、1頭あたり3万円の補助を出すとすると、
3万円 × 10,000頭 = 3億円同じ計算で、もし4万頭増やしたいのであれば、必要な予算は30億円ということになります。国家予算の規模から考えると別に大した額ではありません。パトリオットミサイルシステム一式で約1400億円。ミサイル一発約5億円。F16 戦闘機は1機が様々な要因があると思いますが少なくとも50億円以上はします。ミサイルや戦闘機の方がはるかに高いです。
もちろん、現実はこんなに単純な話ではありませんし、受精卵の供給体制、移植技術者、受け皿となる農場の問題など、考慮すべき点は数多くあります。それでも、ざっくりとしたスケール感を把握するには、この程度の試算でも十分意味があると思います。
ここで言いたいのは、今後の和牛頭数を予測するうえで、国がいつ、和牛受精卵に対して本格的な補助金を出すのか、これが非常に重要な分岐点になるのではないか、ということです。
和牛の更新に補助金を出しても、経産牛が少なくなり、若い繁殖牛が増えるだけで子牛の頭数は増えません。そして新規に繁殖素牛を導入しても、子牛が市場に出てくるまでには、どんなに早くても2年はかかります。
その点、受精卵であれば、子牛が市場に出てくるまでの時間を大幅に短縮することができます。未来のことは誰にもわかりません。和牛子牛が増えれば、肥育農場は助かりますが、生産農場は価格が下落し困ります。様々な利害が絡み合い、いろいろな難しい問題もあるでしょう。和牛の頭数を見ながら未来を予測し、大局観をもってこの波をうまく乗り切っていくしかありません。今後和牛繁殖農家さんはさらに減少し、子牛の供給体制が逼迫してきます。和牛受精卵子牛の出生頭数の推移と国の動きには、引き続き注目していく必要がありそうですね。次回もう少しこの点について書いてみますね!
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