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第851話:またこの季節がやってきた・・・ |
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2025年11月11日
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朝刊の見出しに、こんな文字が並んでいました。
• 自治体「対応限界」
• 国の専門部隊構築急務
• 「心身不調」職員相談20県(20の県で相談が上がっているそうです)
記事を読んだ瞬間思わず「嗚呼・・・」と言ってしまいました。
これは、全国で発生が続く鳥インフルエンザ防疫現場で奮闘されている方々の、悲鳴にも近い訴えです。自治体職員の人数は年々減り続ける一方で業務は増加の一途をたどっています。そんな中、突発的に発生する防疫対応では、昼夜を問わぬ動員がかかります。日常業務に加え、感染拡大を防ぐための「非常事態対応」。その過酷さは、想像を超えるものです。
小生の知り合いにも、数多くの現場経験者がいます。話を聞くと、現場はまさに修羅場。時間との戦いの中で、判断を誤れば感染拡大に直結する。ひとたび発生が重なれば、心身の疲労は極限に達します。それでも、誰かがやらなければならない。使命感だけで動いている現場職員がどれほど多いことか。
鳥だけでなく牛も豚も同じですが、防疫に携わっているとどうしても感じるのが原因究明の難しさです。口蹄疫、豚熱、そして鳥インフルエンザ。発生要因を分析しても、「決定的な感染経路」が見えないことが多いのです。
野鳥、野生動物、人や車両の移動,空気などリスク要因は無数にあります。「なぜ起きたのか」を突き止めなければ、効果的な次の一手を打つことはできません。
感染症対策は、封じ込めと再発防止の両輪です。発生のたびに現場が疲弊し、原因が曖昧なまま「また次も同じことが起こる」のでは、あまりに酷です。
鳥インフルエンザが発生した時には自治体職員や家畜保健衛生所の努力は限界に達しており、この状況を変えるには「人」に依存する仕組みから「仕組み」で人を支える体制へと転換する必要があると言われています。小生もそのように思います。たとえば、災害派遣のように全国レベルで動ける「感染症危機対応チーム」を常設化するなどの提案もなされています。平時には訓練と調査、非常時には即応体制を敷く。こうした国主導の専門部隊がなければ、現場の疲弊は止まらないのではないでしょうか。また、防疫に携わる人のメンタルケアも不可欠です。現場対応は長期化し、精神的な負担も非常に大きい。「公務員だから当然」「現場だから当たり前」ではなく、一人ひとりが人間であることを前提に守る仕組みを、国と地方が連携して作らねばならないのではないかと思います。
防疫は、単なる「感染症対応」ではありません。
それは、地域の畜産を守り、国民の命と生業を守る国家的使命であると小生は思っています。
現場を支える人々の努力と犠牲の上に、私たちの安全な食生活が成り立っています。
だからこそ、今こそ問われるべきは「現場の限界」ではなく、「国の覚悟」ではないでしょうか。小生は地味に毎年国の予算配分をチェックしているのですが、寂しいことに農林水産省の予算は毎年ほとんど変化なし。来年度の予算に覚悟を感じられるといいのですが。ちなみに、防衛予算には「目ん玉が飛び出るぐらいの恐ろしいほどの覚悟」を感じます。正直、将来が怖いです。
今年の冬、鳥インフルエンザの発生がこれ以上ないことを心から願っています。
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今週の動画
よく効きます😄
今回は診療でひどい疥癬症の牛さんがいたので硫黄製剤を塗布して変化を観察してみました。
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