(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第512話「病気を減らすためにできること⑨」

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2025年11月6日

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 哺乳期に行ってほしい病気予防のためのアクションは続きます。
 哺乳期の子牛で問題になるのはほとんどの場合が「下痢」です。

(下痢で死にかけることもあります)
もちろん、消化不良性のものも多いのですが、やっかいなのは大腸菌感染によるものとコクシジウム感染によるものです。前者に関しては、分娩前の母牛に投与する下痢5種ワクチンでの予防が望ましいです。このワクチンには、大腸菌のほかにロタウイルスやコロナウイルスが不活化処理された状態で含まれています。そのワクチンを投与した母牛の初乳を飲むことで、子牛にも抗体が賦与されます。一方、コクシジウムに関しては残念ながらワクチンがありません。そのため、対策としては生後2~3週間ごろを目安にバイコックス(エランコジャパン株式会社)などのトリトラズル製剤を飲ませる方法がとられています。
 とくに、コクシジウム感染による激しい血便症状を示した子牛では、偽膜が出てくることもあります。

(排泄された偽膜)
このような重症例では、強い腹痛から持続挙尾や努責が見られることが多いです。ときには便がなかなか出てこず、血の汁だけがタラ~っと出てくるようなこともあります。こうなると治療も長期にわたることは必至ですし、なによりも子牛の生命が危うくなることも多々あります。特に哺乳期子牛の下痢が問題となる牧場で、その原因がコクシジウム感染によるものであるのならば、こうなる前にトリトラズル製剤をしっかりと飲ませておきましょう。
 意外かもしれませんが、コクシジウムには「少し感染させる」ことが大切です。発症までいかないレベルで感染させることで免疫抗体が作られるため、そののちもコクシジウム感染が起こりにくくなります。あまりに早い段階で薬剤を飲ませると、免疫反応が起こる前に寄生虫が死滅してしまいます。寄生虫感染から糞便中に虫卵が確認されるようになるまでの“プレパテントピリオド”という期間が10日前後ありますので、その期間を考慮して生後2~3週目ごろが投与の目安として設定されています。哺乳期に1度飲ませておけばほとんどの場合問題となりませんが、哺乳期ではなく離乳後や離ハッチ後に下痢が問題となる牧場では、下痢が問題となる1週間ほどを前に飲ませることをおすすめします。
 
 
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