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第510話「病気を減らすためにできること⑦」 |
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2025年10月23日
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疾病予防の第一歩は生まれた瞬間から始まります。
それこそが、みなさんご存知のとおり、「十分な」初乳の給与です。
初乳は質と量とタイミングの3つが重要です。具体的にどのような初乳給与であれば、初乳中の移行抗体を十分に子牛に与えることができるのでしょうか。
①質
理想とされる初乳中のIgG濃度は50mg/dL以上とされています。可能であれば、定期的に初乳中のIgG濃度を測定し、初乳の品質を確認しましょう。ちょっと特殊な検査になるため、容易には実施できない牧場もあるかもしれませんが、その際は糖度計にて相対的な評価を行いましょう。糖度計で測定されたBrix(ブリックス)値が20%以上であれば、IgG濃度はクリアできていると考えてOKです。
②量とタイミング
十分な量とはどのくらいなのでしょうか。目安としては
・生後6時間以内に体重の5%(理想は10%)
・生後12時間以内に総摂取量が体重の10%(理想は15%)
・生後24時間以内に総摂取量が体重の15%(理想は20%)
とされています。
40kgの子牛が生まれた場合は6時間以内に2L~4L、生後12時間以内に出生後からの総量で4L~6Lを給与することが推奨されます。初乳中の抗体は生後24時間程度まで吸収可能とされていますが、時間が経過するにつれて吸収率は下がっていきますので、12時間以内の目標達成を目安に初乳の摂取を意識してみましょう。
③給与方法
時間を意識するあまり、早すぎる給与はかえって子牛に負担をかけてしまいます。よくあるのが、ストマックチューブなどによる強制給与です。第四胃に羊水が溜まっている場合、四胃が異常に拡張し子牛に強い負担を強いてしまう可能性があります。多量の強制給与を行う前に「シリンジで数ミリ~数十ミリを少しずつ飲ませてみる」あるいは「肛門マッサージで胎便を排泄させる」などのひと手間を行ってみましょう。強制哺乳では第一胃にまずミルクが流入するというデメリットもありますので、できるだけ自力哺乳を目指しましょう。
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