(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第509話「病気を減らすためにできること⑥」

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2025年10月16日

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 検査の話ばかりが続いてしまいましたが、忘れてはならない血液検査の重要性について触れ、検査編を終えようと思います。肥育農場では、ビタミンA値や肝数値などを定期的に測定するために血液検査を実施するところが多いと思います。治療ではなく、こうした定期的な血液検査こそ疾病予防には非常に大切です。牛を含め、草食動物は弱みをあまり見せません。症状(エサを食べない、元気がないなど)が現れるころには結構重症になっていることもあります。症状を出す前に健康状態を数字で確認しておくことは非常に大切ですので、健康診断的な血液検査は非常におすすめです。また、治療を行っていても治りが悪い場合も検査すべきです。肝臓や腎臓、腸管内の通過障害の程度などは聴診や視診だけでは十分に把握でません。また、検査値の推移を見ることで、治療が正しかったじかどうかも客観的に判定できます。

 ところで、外部から牛を導入した際にできれば行ってほしい血液検査があります。牛伝染性リンパ腫(旧牛白血病)やBVDウイルスの抗体検査です。牛伝染性リンパ腫の検査は繁殖牛を管理する牧場において、現時点で陽性牛がいなければぜひ行ってほしい検査です(※検査をこれまでしたことがない牧場では陽性牛用の隔離場所を整備する、陽性牛のその後の取り扱いを決めておく、など検査の前にいろいろと考えておくことが大切です。安易に検査してしまうと、陽性牛が複数発見された場合の対応が大変です。また、クリーンな状態を維持するためには定期的な全頭検査も必要なので、家保や診療所の継続協力を得られるかどうかも重要です)。リンパ腫抗体がない母牛群を維持できれば、母牛の発症を心配する必要がないですし、競りにおいて陰性牧場であることが子牛価格に反映されるケースもあります。
 また、BVD検査については、とくに哺乳期子牛や離乳後間もない子牛を導入するケースで重要になってきます。1頭でもPI牛(免疫寛容によってウイルスと共存している状態で治療もできないため淘汰対象)が牧場に入ってくると、糞や鼻水などに大量のウイルスが放出されるため一気に牧場が汚染されます。気づけば下痢や肺炎治療が多発してしまうので、導入時にまとめて検査をしておく方が無難です(PI牛は基本的に発育が悪く虚弱なため、通常の競りに出る8か月齢ごろの牛で体格がよい個体については検査の必要性は低いです)。牛群導入後に下痢や熱の治療が急増した場合、早急な検査の実施をおすすめします。ウイルス感染により妊娠牛が流産したり、新たなPI牛が発生したりするリスクもあるのでBVDが陰性かどうかは早めに確認しておく必要があります。

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