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橋本匠護のコラム
カビ毒検査の事例 ~カビ毒の可能性高い編~

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2025年9月19日

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前回のコラムに引き続き、実際にカビ毒検査を実施した事例紹介です。今回紹介するのは、「流産が散発する」というお悩みのあった農場さんで実施したときの話です。

流産の原因は感染性からストレスまで様々です。感染性には、ネオスポラ、レプトスピラ、アカバネ、BVDなどが関与するとされています。感染性流産は農場内に広がると大きな被害になりうるため、優先的に聞き取りを行います。農家さんに聞き取りすると、異常産ワクチンは実施されており、家畜保健衛生所の病勢鑑定でも原因が分からなかったとのことでした。流産のほとんどは原因特定が困難と言われているため、珍しいことではありません。

牛や環境などもチェックしていきますが、明らかに気になるポイントはありません。そこで農家さんの希望もあり、尿を用いたカビ毒検査を実施することになりました。

その結果、尿中からカビ毒の一種であるゼアラレノンが高濃度で検出されました。ゼアラレノンは牛において繁殖障害や流産の原因となりうるとされています。つまり流産の発生にカビ毒が関与している可能性が高いと言えます。

では早速対策にとりかかります。カビ毒対策で最優先すべきは、「カビ毒を含む飼料の給与を控える」であると考えています。そこで尿によるカビ毒検査を用いて、カビ毒を含む飼料の特定にとりかかることになりました(現在特定中です)。これで飼料の特定ができれば、さらに前段階でカビ毒の発生を抑えるという長期的な対策につなげることもできる可能性があります。

さらに流産はもちろんですが、ゼアラレノンが引きおこす繁殖障害による分娩間隔の延長は経済的な損失となります。具体的な試算は、過去のコラム「早期妊娠鑑定による経営的なメリット」で紹介していますので、そちらもご覧ください。

牛の流産は、原因が特定できていないケースがかなりあると思います。それらのケースのなかに、カビ毒が関与しているものもボチボチあるのでは?と個人的には思っています。
 
 
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