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蓮沼浩のコラム
第842話:尿ってどうやってとるの??

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2025年9月2日

尿検査の内容や有用性については前回までのコラムで触れましたので、今回は少し視点を変えて「どうやって尿をとるのか?という」ことをお話したいと思います。

尿を採るといっても、牛さん相手ですから人さまのように「検尿カップを持ってトイレに行ってください」というわけにはいきません。とはいえ、尿をとらなければ話が進まないので農家さんでもできるいくつかの方法を紹介いたしますね。

1. 自然排尿を狙う
最もシンプルで安全な方法は「自然に排尿するタイミングを待つ」ことになります。牛は立ち上がった直後に排尿することが多いため、その瞬間を見計らって清潔な容器を差し出します。おすすめは「柄杓型の容器」や、「半分に切って柄を付けたペットボトル」。手元が安定し、少し離れたところからでもできるので非常によいです。
一番重要なポイントは、「いつごろ排尿する頻度が高いのか」というこを数日観察をしっかりと行ってから行うということ。どのタイミングで自分の管理している牛は排尿するのかということを把握し、あとは静かにそのタイミングで排尿するのを待つことになります。

2. メス牛なら外陰部刺激
メス牛では、外陰部を清拭したあとに、手袋をした手で優しく撫でたり軽く押さえたりすることで、反射的に尿が出る場合があります。繁殖牛や肥育牛などでは比較的スムーズにいくことも多く、現場で実用的なテクニックです。
ただし、強く刺激すると嫌がって動いてしまうため「軽く、やさしく」が鉄則です。動画のリンクをはっておくので参考にしてみてください。雄牛もこのようにマッサージをすることで排尿を促すことができるのですが、こちらはなかなか簡単にはいきません。柄杓をもって自然排尿を待つのが得策です。

3. カテーテルやシース管を使う方法
雌の場合は「カテーテル法」といって尿道にカテーテルやシース管を入れて膀胱から直接採尿するやり方もあります。これは無菌的に尿を採れるため研究や特殊検査では欠かせませんが、専門的な技術と知識が必要で感染リスクもあります。そのため農家さんが行うことはできません。こうした場合は必ず獣医さんに任せてください。こちらもシース管を使って採尿する方法の動画のリンクをはっておきますね。

4. 採尿の際の注意点
• 容器は必ず清潔に
 再利用する場合も洗浄・消毒・乾燥を徹底してください。残留物があると検査に影響することがあります。
• 牛さんを驚かせないこと
 排尿中は無防備です。静かに近づき、落ち着いた環境で。とにかくリラックスした雰囲気をつくることが一番大切。
• 安全第一
 蹴られたり襲われたりする危険があります。必ず安全第一で無理のない体勢で採尿してください。
• 採尿後は冷凍保存
 採取した尿は変質しやすいため、速やかに冷凍保存してください。その後、検査依頼の際に冷凍状態で提出していただくと、正確な結果につながります。

尿をとる方法は決して難しいものではありません。
「自然排尿を待つ」「メス牛なら外陰部刺激」。どうしても採尿には時間がかかってしまいますが、地道にトライしてください。あくまで「日常的に取りやすい範囲での採尿」です。特殊な方法は獣医さんに任せてくださいね。

意外と簡単そうで難しい採尿。とにかく、日々の観察が非常に重要になります。おしっこをするタイミングを毎日意識してみてください!

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