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第841話:尿中マイコトキシン検査をどのように経営改善につなげられるのか? |
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2025年8月26日
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これまでのマイコトキシン検査といえば、サイレージ、粗飼料、配合飼料などの飼料サンプルを検査する方法が主流でした。バンカーサイロに保存しているサイレージから何カ所もサンプルを採取したり、飼料タンクの中の餌を採取したりと、やり方はさまざまあります。しかし、ここには実は大きな落とし穴があります。
• サンプルがロット全体を代表しているとは限らない!
• 家畜が実際にどの程度摂取しているかはわからない!
• サイレージ内での発酵ムラにより、検査結果と臨床症状が一致しない!
例えば、飼料検査で「ZENは検出されません」と判定された農場でも、尿検査をしてみるとZENが検出されることがあります。これは、給与飼料の一部に高濃度の汚染部位が含まれていたり、農場で保管している時にカビ汚染が起きていたりする可能性を示唆しています。どうしても飼料検査だけでは見えない「体内曝露」を正確に把握することは難しい面があります。
ここで威力を発揮するのが、尿中マイコトキシン検査です!
尿中マイコトキシン検査の最大の強みは、「動物が実際に口から摂取し、体内で代謝した結果」を直接反映していることです。これにより、農場単位でのモニタリングや、問題の早期発見が可能となります!
【 活用シーンの具体例 】
1. 繁殖成績不良農場の原因調査
受胎率低下や流産が続く場合、ZEN濃度を確認することで原因の一端を特定できます。
2. 飼料変更前後の比較
配合飼料や粗飼料を切り替えた際に、尿中のZENやDON濃度が下がるかどうかを検証可能です。
3. カビ毒吸着剤の効果検証
吸着剤を使用することで尿中濃度が低下するかを測定し、費用対効果を科学的に評価できます。
4. 季節変動の把握
夏場や梅雨時期など、高温多湿環境下で汚染リスクが高まる時期に定期的にチェックすることで、リスク管理を強化できます。
尿中マイコトキシン検査を導入することで、繁殖不良や発育不良といった「微妙な問題」を数値で可視化し、改善につなげることができます。結果として、以下のような経営効果が期待できます。
• 繁殖効率の改善 → 出荷頭数の安定化
• 飼料コストの最適化 → 不必要な添加剤使用の削減
• 疾病予防 → 治療費の削減と成績の向上
• 科学的データに基づく判断 → 損失リスクの低減
シェパードでは、今回新たに導入した尿中マイコトキシン検査サービスを活用し、農場の現状を「数値で見える化」することで、少しでも牧場経営の安定化にお役に立てるようにと考えています。
【 まとめ 】
• マイコトキシンは低濃度でも繁殖成績や免疫機能に影響を及ぼす。
• 飼料検査では把握できない「実際の摂取量」を尿検査で可視化可能。
• 定期的なモニタリングにより、問題の早期発見と経営改善に直結する。
尿中マイコトキシン検査は、牧場の安心・安全、そして動物福祉(アニマル・ウェルフェア)に資する非常に有益な検査です。
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今週の動画
臍ヘルニアの中に腸管!エコーで観察
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