(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第839話:米国関税15%上乗せ??

コラム一覧に戻る

2025年8月12日

***********************************************************
2026年卒獣医師採用について

(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)は、獣医師を募集しております。詳細はこちらをご覧ください。
獣医さんの卵である大学6年生で就職を考えている方がいらっしゃったら是非実習に来てください!お待ちしております!
***********************************************************
 
 
8月8日の朝、いつものように南日本新聞を広げていたら、記事を見て思わず手が止まりました。

「なんじゃこりゃ? うそでしょ??」

つい声が出てしまいました。
政府間交渉でこんなことってあるの???

小生、日本の牛肉の未来にとって輸出拡大は絶対に必要だと常々思っています。ところが、その最大の輸出先アメリカ向け牛肉の関税が、従来の26.4%からなんと41.4%に! 私の頭の中では「26.4%据え置きだろう」と思っていたので、もうビックリ仰天。関税が約57%も上がる計算です。

しかも牛肉だけじゃなく、日本からの一部輸入品すべてに15%上乗せするとのこと。理由はハッキリせず、「日本政府との見解の食い違い」か、「米国側の事務的ミス」か・・・一応は「事務的なミス」という説明ですが・・・

ホンマかいな??
いやいやアメリカさん、「砲艦外交」や「脅迫外交」とはいいませんが、
ちょっとそれはあんまりじゃありませんか。

記事には「トランプ氏と正面からぶつかると激怒されるので、日本政府は巧みな対応が求められる」との一文も。
激怒ですか・・・
ブチ切れた者勝ち・・・
マジか・・・

国際貿易の現場では、一行の数字や一文の条文が何億円、何百億円の影響を持つ世界です。今回の15%も表向きはミスだとしても、その裏には米国内の政治事情や駆け引きが潜んでいるんじゃないか・・・いくらのんきな田舎鼻糞獣医師でも、ついそう勘ぐってしまいます。一応日本からはアメリカ側に約81兆円の投資をするという話ですけど、これもなんだかアメリカ様がもらったとかいう話もあるとかないとか。いやはや、国際政治ってマジでヤベー。昨今の世界情勢をみても、とてもじゃないけど、どれもこれもヤバすぎる。超ハードモードのクソゲーの世界です。間違いなく田舎鼻糞獣医師が近づいてはいけない世界です。

気を取り直して、この上乗せが和牛輸出にどう響くのか、ちょっと計算してみましょう。
現在、日本産和牛の米国向け卸価格はおおよそ1kgあたり5,000円(約32ドル)。従来の関税25%なら輸入原価は約40ドル。そこに流通マージンや小売マークアップが加わって、米国の高級スーパーやレストランでは1kgあたり80〜100ドルで提供されます。

これが今回40%の関税になると・・・
32ドル × 1.40 = 44.8ドル。
最終的な小売価格は1kgあたり90〜110ドル、部位によっては120ドル超えも珍しくなくなります。米国の富裕層にとってはまだ手が届きますが、「特別な日の贅沢」から「超高級嗜好品」へとさらに格上げ。販売量は確実に減り、消費者層も狭まるでしょう。

仮に米国向け和牛輸出が年間2,000トンで、そのうち20%が価格上昇で減るとすると、約400トンが国内市場に流れ込みます。今年4月以降すでに米国向け輸出額が2割減との報道もあり、この傾向は強まるかもしれません。
国内和牛枝肉生産量は年間約47万トンなので単純割合では0.08%程度。でも、これは全体の話で、特定ブランドや特定時期に集中すれば価格押し下げ効果は結構大きい。高級部位は需給バランスが崩れやすく、少し供給が増えただけで数%の値下がりは十分あり得ます。例えば去勢和牛A5の東京市場平均価格が現状1kgあたり2,200円なら、3%下がると約2,134円。1頭あたり約30000円の減収です。高値相場には確実に逆風です。

今回の15%上乗せが、日本政府の想定外なのか、米国の単純ミスなのか、それとも政治的カードなのかは今のところ不明ですが、過去の例から見ても関税引き上げは一度やると戻すのに相当な時間と労力がかかります。「一度得た優位は手放さない」のが交渉の鉄則。たとえミスでも「撤回します」とは言いづらく、むしろ修正条件として新たな譲歩を求めてくる可能性すらありそうです。

まだ始まったばかりの話ですが、暗澹とします。しばらくアメリカ政府の動きから目が離せません。
 
 
***********************************************************
今週の動画
持続挙尾のその理由

|