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蓮沼浩のコラム
第836話:日中動物衛生検疫協定の発効 その2

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2025年7月22日

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2025年7月11日――中国から「効力発生」の正式な通告を受け、ついに日中動物衛生検疫協定が発効いたしました。
署名から発効まで、なんと5年8ヶ月。いやはや、実に長い道のりでございました。

では、なぜこれほどまでに時間がかかってしまったのか?

もちろん表面的な理由はいくつかあります。
たとえば中国側の内部承認に時間がかかったこと。
あるいは放射能検査体制の整備や、BSE対策のすり合わせ、そして検疫証明書の様式や記載方法など、細部の調整にも時間を要します。これらは国家間協定では日常茶飯事で、粛々と処理されるべき案件といえます。

しかしですね、小生は思うのです。もっと本質的で、もっと大きな問題が立ちはだかっていたのではないかと・・・

まず、そもそもの協定署名は2019年11月25日。この日付、記憶にとどめておいてください。実はこの署名から、わずか2週間後――世界は激変の渦に巻き込まれていきます。

そうです。忘れもしない新型コロナウイルス(COVID-19)の発生です。

中国・湖北省の武漢市にて「原因不明の肺炎」が初めて報じられたのは、2019年12月8日。
つまり、協定の署名が行われた直後です。ただ、ここで少し考えてみてください。政府の発表というのは、現地での感染が始まってからしばらく経ってからのものです。
これは我々が扱う牛の感染症と同じです。発見された時点では、既に静かに広がっている。
ましてや、それが「誰も経験したことのない未知の病原体」であればなおさら。
早期発見・早期通報とよく言われますが、現場の混乱や初期対応の難しさを考えれば、それがいかに難しいことかは畜産業に携わる方なら痛いほどご理解いただけるはずです。

その後の展開は、皆さまもご存じの通りです。
2020年1月16日、日本国内で初めての感染者が確認されました(神奈川県在住、武漢から帰国された方)。そして、あの「ダイヤモンド・プリンセス号」が連日ニュースを賑わせ、日本中が不安と混乱に包まれていきました。もはやこの時点で、冷静に中国と動物衛生に関する協議を続けられる状況ではなかったのです。人と人が自由に行き来することすらままならず、国家間の実務的な協議など、後回しにせざるを得ない非常事態。これが現実でした。

したがって小生は思うのです。
「署名から発効までにこれほどの年月を要した最大の理由は、コロナ禍による世界的な停滞に他ならない」と。出鼻をくじかれた、という表現がまさにしっくりくるのではないでしょうか。
 
 
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