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蓮沼浩のコラム
第835話:日中動物衛生検疫協定の発効 その1

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2025年7月15日

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先日の7月11日、突然「動物の衛生及び検疫における協力に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」が発効されたというニュースが飛び込んできました。この協定の発効により、日本産牛肉の輸出再開への重要なハードルが取り払われたとされています。日本と中国の間で動物衛生と検疫に関する協力体制が強化され、日本産牛肉が中国に輸出できる可能性が非常に高まってきたというわけです。

期待しすぎるのは少し危険ですが、肉用牛業界にとって決して悪い話ではありません。ほんの少しでも消費拡大につながるのであれば、それは非常にありがたいことです。ただ、小生は中国との牛肉の輸出入に関して、それほど詳しいわけではありません。そこで今回からは、この協定についていろいろと調べた内容を、小生の独断と偏見で、数回に分けて紹介してみようと思います。

さて、最初の問題。
なぜ中国への日本産牛肉の輸出ができなくなったのか?

実は、発端はBSE(牛海綿状脳症)でした。2001年9月、日本で国内初となるBSEの発生が確認されると、中国政府は即座に日本からの牛肉輸入を全面的に禁止しました。ここが、すべてのスタートラインです。
当時、中国政府は日本だけでなく、英国・フランスをはじめとする欧州13か国に対しても同様の措置を講じており、BSEの感染リスクを未然に防ぐための厳格な対応を取っていたのです。

そういえばBSE騒動、ありましたよね~~~

とにかく、あのときの畜産業界は地獄絵図のような状況でした。牛肉の価格は大暴落し、流通現場も消費者も大混乱。小生が臨床獣医師として歩みを始めたころは、まさに口蹄疫やBSEなどの家畜伝染病が立て続けに発生し、「この業界、一体全体どうなってしまうんだろうか・・・とんでもない世界に足を踏み入れてしまった」と不安ばかりが募る時期だったのを、今でもよく覚えています。

では、日本と同時期に中国からの輸出停止措置を受けた英国とフランスは、その後どうなったのでしょうか。英国の場合は、なんと約20年近くにも及ぶ輸入停止が続いた末に、ようやく2018年6月に、中国が英国産牛肉の輸入再開を認めると発表しました。フランスもまた、約17年間にわたって牛肉輸入が禁止されていましたが、こちらも同じく2018年6月、検疫協定の合意を経て、輸入再開が正式に決定されています。

では、日本はというと、2019年11月25日に、実は今回発効した協定に署名までこぎつけていたのです。当時は農家さんたちが皆さん鼻息荒く、これで枝肉価格はすごいことになるぞとテンションが上がっていたのを思い出します。しかし、その後輸出に関しての話は全くでることはなく、気が付けば誰もそのことを語る人はいなくなっていました。俗にいう、ぬか喜びというやつです。

そこから先の道のりが、まぁとにかく長い、長い。国際政治や検疫制度、時折見える外交上の駆け引きなどが複雑に絡み合い、実際の発効までに約5年8か月もかかっています。次回は、この「なぜそんなに時間がかかったのか?」という点を含め、今回の協定について、さらに深掘りしていきたいと思います。
 
 
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今週の動画
鼻塞音ってなんだ

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