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戸田克樹のコラム
第495話「僕らはどうして直検をするのだろう②」

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2025年7月10日

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 直腸検査(以下、直検)の目的のひとつめは「直腸粘膜の状態を確認する」ことにあります。

 健常牛であれば、腸粘膜の触感は「パリっ」っとしています(適切な表現がまったく思い浮かばず恥ずかしい限りです・・・)。通常の直腸粘膜は皮膚ほど固くはありませんが、適度な張りがあります。それでいてほどよく水分を含んでいるため軟らかさもある、というような感触です。

腸の一部(適度な水分を含んでいて柔らかいが張りもある)

 しかし、激しい下痢や慢性の下痢を起こしている場合、その強い炎症によって腸粘膜が「ブヨブヨ」と非常に柔らかい状態になってきます。水ぶくれしたように粘膜がせり出してくることもあります。こうなると、細胞内の水分や粘液ももれやすくなるため、液体成分が腸管内にどんどんと出てきて、結果として便がさらに緩くなります。

 感染性腸炎の場合は病原体の排除によって炎症が自然と収まるのですが、食餌性の下痢の場合は添加剤の利用や飼料の見直しなどを行っていかないと腸管の炎症自体が収まらず、腸粘膜がさらにダメージを受けてしまうという悪循環に陥る可能性もあります。治りが悪い場合はステロイド剤の利用に加え、粘膜細胞の強化のためにビタミンAの補給や亜鉛・銅といったミネラル類の補給も行ってみましょう。下痢の重症度やアプローチの方法を考えるためにも、腸粘膜の状態を把握しておくことは大切です。

つづく
 
 
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今週の動画
牛の神経学的検査 〜固有受容感覚〜

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