(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
戸田克樹のコラム
第493話「ニップルのチェック日を決めておこう」

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2025年6月19日

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 人工哺乳を行っている牧場では、乳首が劣化していないかを定期的に確認する作業を行っている牧場がほとんどだと思います。この確認作業の目的は、「誤嚥の発生を防ぐ」という1点にあります。
 誤嚥というのは非常に恐ろしいものです。牛の気管は胸腔内に入る直前で緩やかにカーブしているため、いわゆる気管の底部まで侵入したミルクはいつまでたっても気管の外に出ていかない危険性があるのです。また、牛には気管の気管支という通常の気管支分岐とは別な分岐があり、右前葉に直接進む分岐があるため気管底部を抜けたミルクは簡単に右肺前葉に侵入してしまいます。

 ミルクは強い炎症反応を起こすため、肺出血、その後の胸膜性肺炎(肺と胸膜が癒着した肺炎)、化膿性肺炎(肺内部に化膿巣が形成された状態)へとつながる可能性が高いのです。

1回の誤嚥から重篤な肺炎へ移行してしまうことが多く、なかなか治らない場合も多いため、誤嚥を防ぐというのは非常に重要な作業になります。中には「逆さまにしてミルクが垂れてきたら交換する」という牧場もありますが、乳首交換のタイミングとしては遅いように思います。できれば「週に1回」は乳首の状態を確認する日を設けていただきたいものです。確認するときは必ず押しつぶして吸い穴の広がり方を確認しましょう。

ニップルの吸い穴が大きくなっていたり、横に変な亀裂が入っていたりしたら、速やかに取り替えましょう。
 もちろん、交換すべき乳首の状態を写真やイラストなどで共有しておくことも非常に重要です。また、ミルクを飲んだ後にむせる子牛が多い場合は飲ませる角度が悪い可能性もあります。ミルクホルダーの位置を変えてみてせき込みが激減したケースもありますので、飲乳時の子牛の首の角度をよく見てみることも大切です。
 
 
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