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蓮沼浩のコラム
第832話:稟告あれこれ その2

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2025年6月17日

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「牛の下痢が全然止まりません~~~~」という稟告。

なるほどなるほど。牛さんが下痢してなかなか止まらないのですね。よくわかります。
ただですね~~、これでは獣医さんは何もアドバイスすることが出来ないのですよ。
実は肉用牛の獣医さんにとって、牛さんの症状ももちろん非常に大切なのですが、それに匹敵するぐらい重要な情報があるのです。

それは何かといいますと・・・

牛の「用途」と「性別」、そして「大まかな日齢、月齢、年齢」です。

たとえば、「肥育牛、去勢、18カ月齢」や「繁殖牛、メス、6歳」などといった情報ですね。
なぜこのような情報が重要かといいますと、それぞれの状況により想定される疾病がかなり限られてくるからです。そして、治療の方向性や使用できる薬剤も大きく変わってくるのです。

牛の「下痢が止まらない」という症状ひとつ取ってみても、肥育牛なのか、繁殖牛なのか、あるいは哺育期の子牛なのかでまったく意味合いが違います。

たとえば、生後1カ月の子牛であればロタウイルスやコロナウイルス、クリプトスポリジウムなどの感染性下痢や母乳性の白痢を疑ったりしますし、生後20カ月の肥育牛であればルーメンの状態や栄養状態、薬剤の使用制限も考慮したりします。
雄と雌でも疾患の傾向が異なりますし、雌であれば繁殖の状況やホルモンの影響も含めて見ていく必要があります。

では、実際に稟告を聞いた場合に獣医さんがどんなふうに考えるか、ちょっと小生の頭の中を覗いてみましょう。

「生後26カ月齢のメス肥育か~~。出荷もそろそろだし、規制の長い薬剤を使うことは絶対に気を付けないといけないな。症状次第だけど、最長で規制7日だな。下痢がなかなか止まらないというけど、当然ビタミンAも低いだろうし、ルーメンアシドーシス気味なのは間違いない。食欲はどうなのだろうか。粗飼料や配合飼料の採食量はどうなのだろうか。コクシジウムやクロストリジウムによる下痢の可能性もあるなあ。血が少しでも混じっている時は顕微鏡検査をした方がよさそうだ。尻尾を少しあげているかもしっかりと確認しておかないといけないな。もしかしたら脂肪壊死症の可能性もあるもんね。右膁部の振蕩聴診も必要だね。拍水音が聞こえるかも。金属製有響音のチェックも必須だね。もちろん体温のチェックも忘れずに。足の浮腫みや被毛の状態、瞳孔の収縮状況はどうかな。足が浮腫んでいたら、やはりビタミンAは補給したいよね。まずは一通りチェックしてから方向性を決めないといけないな。特に引っかかるところがなければ、すぐに血液検査だね。」

と、まあこんな感じです。

つまり、「牛さんの用途と性別とおおまかな月齢」というのは、実はものすごく大事な情報なんです。ですので、稟告はぜひ、

「先生~~和牛肥育去勢の20カ月齢なんだけど・・・・」
といった感じでスタートしてもらえると、獣医さんは非常に助かりますし、早く的確なアドバイスができます。

頭の片隅にでもいれておいていただけたら嬉しいです~~!
 
 
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