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蓮沼浩のコラム
第831話:稟告あれこれ その1

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2025年6月10日

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小生は、いつも回っている往診先の状況が大体頭の中に入っています。
どのような牛を管理していて、頭数はどのくらいか。牛舎環境はどんな感じか。農家さんや牧場の従業員さんはどんな雰囲気の方々か。よく出る病気はどんなもので、これまでに出た病気はどんな経過をたどり、どれくらいで治るのか。エサは何を与えていて、飼養管理のスタイルはどんな感じか――などなど。

それこそ農場ごとに、言葉ではとても説明しきれない膨大な情報が、小生の頭の中には入っています。もちろん、農家さんやスタッフの性格なんかも。これ、非常に大切。一番重要かも(笑)。いつもバカ話ばかりしているので、大体わかります。

このように、基本的な状況がしっかり頭に入っている牧場の場合、ほんの少し稟告を聞いただけで、その牛の状態がパッと頭の中に浮かんできます。牧場の雰囲気までも、ありありとイメージできます。そして、治療方針や、どれくらいで治りそうかまで、おおよその見当がつくのです。

ちょっとした例を出してみますと・・・。

Aさん「先生、下痢~~~」
稟告はこれだけ。
でも、小生にとっては、このたった一言でも、すぐにいくつかのパターンが頭に浮かびます。今、とある農場をイメージしてみると、こんな感じになります。

【パターン1】
親付けの子牛で、生後1カ月以内。
下痢の色は黄白色で、びゃ~~~~っと激しく飛ばしている。
子牛は元気で脱水もなく、いつもの処置をすれば2~3日で治るな。
最近、このタイプの下痢はあまり見てなかったけど…親の粗飼料でも変わったのかな? それとも親牛が発情中?

【パターン2】
親付けの育成子牛で、月齢4~5カ月くらい。
子牛は元気で、熱もなく、走り回っている。
緑茶色の流泥状の下痢便を、豪快に飛ばしている。
これも2~3日で回復しそう。
最近、育成子牛の下痢を治療した記憶があるな。また似たような下痢が出てるのかな。「先生、下痢~~~」の“下痢~~~”のところのテンションが、やや低めなので、もしかすると再発かも。それか、別の子牛が下痢してて「あ〜〜〜あ」って感じなのかも。

と、まあ、こんな感じです。ちょっと言葉で説明するのが難しいのですが、小生の頭の中では、いつも回っている農場の牛たちについては、稟告を聞いた瞬間にイメージがバーッと浮かび上がってくるのです。全部を文章にするのは難しいのですが、牧場の中や、農家さんの「だるそうな顔」まで想像できます。

ただし、これはあくまで“日々往診している農場”限定の話。
知らない牧場や、あまり行ったことのないところでは、さすがの小生でもそう簡単にはいきません。

「先生、エサ食べないんです」と言われても、よく知ってる農場であればすぐに「ああ、あのパターンか」となるのですが、初見の農場では、まずいろいろ聞き出す必要があります。
というわけで、次回からは「稟告をするときに、どんな情報を獣医さんに伝えたらいいのか?」という点について、小生の独断と偏見を交えてお伝えしていこうと思います!
 
 
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今週の動画
胃汁投与を行う症例

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