(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
蓮沼浩のコラム
第828話:今後の方向性 その4

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2025年5月20日

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2026年卒獣医師採用について

(有)シェパード鹿児島本所(鹿児島県阿久根市)は、獣医師を募集しております。詳細はこちらをご覧ください。
獣医さんの卵である大学6年生で就職を考えている方がいらっしゃったら是非実習に来てください!お待ちしております!
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獣医師として、小生は日々田舎を車で走りながら、地域の状況をつぶさに観察しています。牛さんがいる場所はやはり田舎が多く、その土地に住んでいると、子供たちの学校の人数や地域の動向についても自然と情報が入ってきます。少子高齢化が進む現状を、実感として日々強く感じています。日本の人口は2005年に初めて減少に転じ、2011年からは14年連続で減少傾向が続いています。そして2024年には、外国人を除いた日本人の人口が前年より89万8000人減少。率にして0.74%減少。減少幅、減少率ともに過去最大となりました。小生の住んでいる出水市の人口が約5万人ちょっとですから、この減少の規模がいかに大きいかがわかります。この流れはますます加速しており、地域社会にも深刻な影響を及ぼしていくことは確実です。
私がコンサルティングを行う大手の牧場さんでは、外国籍の方が本当に多くなってきました。畜産業の運営には外国の方々の力が必須であり、欠かすことができなくなっています。2023年には日本に住んでいる外国籍の方の人数は前年より34万7000人増加し、合計で350万6000人になっていることが分かっています。畜産業では、このような外国からの労働力を受け入れなければ、牧場を運営することが非常に難しくなっています。いや、不可能といってもいいレベルになってきています。このような状況を踏まえ、国が掲げる担い手の確保と経営力の向上に関する施策をしっかりと理解し、現場のニーズにどのように対応していくべきかを考えることは非常に重要だと感じています。

【 担い手の確保と経営力向上 】

・ 高齢化と人材減少:酪農・畜産の基幹的農業従事者の多くが60歳以上であり、今後20年間で酪農は約半分、肉用牛は約4分の1に減少する見込み

・ 新規就農の支援:新規就農者は多額の初期投資(農地の取得、施設の整備、家畜導入)を必要とするため、支援策として既存の農場を改修して貸し付ける取り組みを進める。

・ 技術・知識の向上:就農前後の継続的な研修や経営・営農指導が重要であり、地域の農業組織や自治体によるサポートが不可欠。

・ ヘルパー制度の強化:酪農・肉用牛ヘルパーは新規就農者に知識・技術を提供し、就農後も相談できる場を提供。これを強化することが重要。

・ スマート農業技術の活用:ICT技術やデータ活用により、経営の効率化と生産性向上を図り、民間事業者や獣医組織のサービスを活用する。

【 労働力不足への対応 】

・ 労働力の増加傾向:1頭当たりの労働時間は減少傾向だが、規模拡大により1人当たりの年間労働時間は増加。人手不足が深刻化

・ スマート農業技術の導入:搾乳ロボットや発情発見装置、分娩監視装置の導入が進み、労働負担の軽減を図っている。

・ 外国人材の活用:技能実習生や特定技能外国人の増加により、人手不足への対応を強化。外国人材の活用と支援体制の充実が必要。

・ 法人化と協業:複数の経営体による協業や法人化が進み、労働力や休日の確保を目指す。

・ 酪農・肉用牛ヘルパーの重要性:家族経営における休日確保や傷病時の経営継続に不可欠な酪農・肉用牛ヘルパーの制度を強化。

・ キャトルステーションとキャトルブリーディングステーション:子牛の育成や繁殖雌牛の分娩・種付けを行い、労働負担軽減と生産性向上を推進。

【 政策・法整備 】

・ スマート農業技術活用促進法:農業の生産性向上のためのスマート農業技術活用促進法が施行され、省力化機器の導入を推進。

・ 外国人材の就労支援:新たに創設された育成就労制度を活用し、外国人材の確保と育成を進めるためのサポート体制の充実が求められる。

ざっくりとまとめるとこのようになります。いろいろなご意見があると思います。ただ、現実はこのような状況であることを認識しておくことは非常に重要なポイントです。特に小生が衝撃をうけたのは、20年後には肉用牛に従事する方が25%に減るということです。25%減るではなく、25%に減る。つまり75%減少という予測。

はてさて、20年後の日本はどのようになっているのやら・・・。粛々とやるべきことをやりながら、来るべき時に備えて匍匐前進しながら色々とチャレンジしていくしかなさそうです。
 
 
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今週の動画
牛の○液(取材協力 萩原人工授精所さま)

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